各党代表質問 台湾重視だが矛盾隠せぬ立民


 衆院本会議で岸田文雄首相の初の所信表明に対する各党代表質問が始まり、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の甘利明幹事長らが質問に立った。14日の衆院解散を前に今国会では最初で最後の論戦であり、選挙遊説を先行したような国民への訴えともなっていた。

辺野古移設中止を訴える

 枝野氏は「政治の最優先課題はコロナ対策」として、新型コロナウイルスの水際対策徹底など立民の政策を訴えた。だが、1月の通常国会で提唱した感染収束の徹底を図る「ゼロコロナ」には触れなかった。感染ゼロを掲げて東京都議会議員選挙まで東京五輪・パラリンピックの中止か延期を公約してきただけに、果たして現実的な政策だったのか、この点は説明が求められよう。

 枝野氏の代表質問は目前の衆院選に向けて、共産党との選挙共闘で支持が離れかねない保守的な支持層をつなぎ止めようと腐心する姿勢が目立った。これまでの代表質問では「共生社会の実現」「多様性の尊重」など党理念を前面に打ち出す主張が目立ったが、今回は危機管理の司令塔機能強化の公約提示、沖縄県・尖閣諸島周辺海域での中国公船の違法活動への批判と領域警備・海上保安庁強化法案提出のアピール、「健全な日米同盟」の標榜(ひょうぼう)などを行った。

 ことに政敵視して批判し続けた安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想に合わせるかのように、同地域の「平和と繁栄が日本の国益のためにも重要と考える。中でも台湾は、地理的に近接しているだけでなく、経済的結び付きも強い上にシーレーンの確保という意味でも戦略的に重要だ」との指摘もした。

 また、台湾について「何より自由と民主主義、法の支配など基本的価値観を共有する重要なパートナーだ」と述べた。まさにその通りだが、何をするのかが問題である。「台湾海峡の平和と安定を重視し、力による現状変更を認めることなく、両岸問題の平和的解決にさらに努力する」という掛け声だけでは物足りない。

 しかし枝野氏は、在沖縄米軍の普天間基地の辺野古への移設工事に批判的な見解を示して「中止した上で米国に対し、基地の在り方を見直す交渉を呼び掛け、粘り強く取り組んでいく」と白紙化を求めている。枝野氏ら立民の少なからぬ議員が民主党政権時代に鳩山由紀夫内閣で日米合意を白紙化して見直し、結局たどり着いた辺野古移設に再び「中止」を主張するのでは、掲げた「日米同盟」も本物か疑問だ。

 そもそも台湾や日米同盟を重視し、中国の「力による現状変更」を食い止めて現状を維持するためには、台湾有事にも対応するであろう在日米軍、特に在沖米軍は非常に重要である。枝野氏の主張では反対に台湾の危機を招来しかねない。

保守受け狙いは通用せぬ

 党内に左派と右派が存在し、さらに共産党、社民党、れいわ新選組、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と選挙協力する一方、部分的に保守層受けする政策を掲げても矛盾は隠せないと言えよう。