東京パラ閉幕、共生へ心のバリア取り除いた


 共生社会へ向けての確かな手ごたえを残して、東京パラリンピックが閉幕した。新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する困難な状況下で、大きな問題もなく13日間の大会を成功裏に終えることができた。大会の遺産(レガシー)を多様性と調和の社会実現に繋(つな)げていきたい。

家族らの支えで活躍

東京パラリンピックの閉会式に出席し、手を振られる秋篠宮殿下=5日夜、東京・国立競技場

 素晴らしいパフォーマンスで、開催国日本と世界の人々に感動と勇気を与えてくれたパラアスリートたちを讃(たた)えたい。そして、彼らの伴走者としてサポートしてきた人たち、ボランティアを含むすべての大会関係者に感謝したい。

 162カ国・地域の選手が参加し、22競技539種目で熱戦が展開された。日本は金メダル13個、銀15個、銅23個という史上2番目の好成績を収めたが、何よりも選手たちの輝く姿から感動と勇気をもらった。パラリンピックやパラアスリート、障害者への認識を新たにさせられ、多くの気付きを得た。

 さまざまな障害を抱えながらも、自己の限界に挑戦し、スポーツに打ち込み、それを楽しむ姿は、テレビで観戦する人々に大きなインパクトを残した。

 「パラリンピックの父」ルードウィッヒ・グットマン医師の言葉「失ったものを数えるな。残された機能を最大限に生かそう」がパラリンピックの精神だ。これは形こそ違え、ほとんどの人に共通する言葉である。パラアスリートたちは、全ての人が行くべき道をスポーツという形で示していると言える。その気付きや感動が、障害者と健常者との間にある距離を一気に縮めた。これが開催国日本にとって最大の恩恵ではないか。

 東京都内の95%を超える駅で段差を解消するなど、バリアフリー社会の建設は進んだ。しかしそれはハード面だけでなく、ソフト面でも進められなければならない。中でも心のバリアフリーが課題だったが、今大会が心のバリアを取り払うきっかけとなることを期待したい。

 パラアスリートの活躍の背後には、彼らを支える家族や支援者、伴走者がいた。視覚障害者女子マラソンで金メダルを獲得した道下美里選手が、競技後まず語ったのは「仲間たちとつかんだメダル」という伴走者たちへの感謝の言葉だった。

 閉会式では、大会ボランティアに対し、選手の側から感謝のしるしとして表彰式で渡された花束が贈られる心温まる場面があった。障害を持つ人々との共生がどれだけ進んでいるかは、社会の成熟度を示すバロメーターと言える。次のパリ大会へ向け、パラリンピック開催の重みはさらに増していくだろう。

 社会を変革するメッセージの発信という点で、東京パラリンピックは東京五輪に勝るとも劣らない手ごたえを残した。重要なことは、大会のレガシーを生かして、より実質的な共生社会を実現していくことだ。

観戦体験を教育に生かせ

 実質無観客となった今大会だが、児童生徒が参加する「学校連携観戦プログラム」が実施された。パラアスリートの懸命のパフォーマンスは、子供たちの心に深く刻まれたはずだ。こうした体験を教育現場でぜひ生かしてほしい。