新型コロナ起源、解明・予防に再調査は当然だ


 新型コロナウイルスの起源について、中国の研究所からの流出の可能性が高いとする報告、報道が米英を中心に相次いでいる。こうした中、バイデン米大統領は流出説を含め、ウイルスの起源を追加調査するよう情報機関に命じた。人類が感染症と戦っていくために徹底的な再調査・解明が望まれる。

 米英で流出説強まる

 新型コロナの起源については、コウモリなどの動物由来説が言われる一方、人工的に製造され、武漢ウイルス研究所(WIV)から流出した可能性を指摘する声が上がっていた。しかし、この人工説、流出説はノーベル賞受賞者を含む少なからぬ科学者がその可能性を指摘しているにもかかわらず、本格的に検証されることもなく、「陰謀論」などとして退けられてきた。

 元ニューヨーク・タイムズ紙のベテラン科学ジャーナリスト、ニコラス・ウエイド氏は、1年以上たっても感染経路についての手掛かりがないことを指摘して「研究所流出説の方がはるかに容易に説明できる」との見方を示している。英紙サンデー・タイムズも、英情報機関がWIVから流出した可能性が高いとみていることを伝えている。

 中国に派遣された世界保健機関(WHO)の調査団は、動物の中間宿主を媒介に人に感染したとの仮説が最も有力とし、WIVからの流出については「極めて可能性が低い」とほぼ否定した。これに対し、日米など14カ国は声明で「調査が大幅に遅れ、完全な元データや検体へのアクセスが欠如していた」とし、追加調査を行うよう求めた。

 調査団は2020年7月に先遣隊を北京に送ったが、武漢での調査開始は大幅に遅れ、今年の1月末となった。調査団をやり過ごす準備や証拠隠滅のための時間稼ぎを行っていたと疑われても仕方のないものだ。

 バイデン氏は「中国に対し完全で透明性のある証拠に基づく国際調査に参加するとともに、関連するすべてのデータと証拠へのアクセスを認めるように圧力をかける」と表明している。

 WIVでは機能獲得研究が行われ、実験で作られた危険性の高いウイルスの漏洩(ろうえい)のリスクは以前から指摘されてきた。この研究に米国の研究所が資金提供していたことが明らかとなり米議会でも問題となっている。これにはファウチ米国立アレルギー感染症研究所長も関わっていた疑いがある。

 WHO調査団の唯一の米国メンバーであった米非営利団体エコヘルス・アライアンスのピーター・ダザック代表は、流出説を「純粋なでたらめ」などと言い封じる急先鋒(せんぽう)だった。流出説を「陰謀論」と退けてきた背景も明らかになりつつある。

 中国は要求に応えよ

 米の著名な生物学者18人がサイエンス誌に書簡を発表して「十分なデータが得られるまで、自然発生説と研究所流出説の両方を真剣に受け止めるべきだ」と中国にデータ公開と再調査を呼び掛けた。世界で1億7000万人以上が感染し、約370万人の死者を出してなお猛威を振るう新型コロナの起源の解明は、人類の今後の感染症との戦いに不可欠だ。中国はその要求に応える責任がある。