中国の宗教弾圧 不当な拘束で信仰を奪うな
米国務省が、信仰の自由に関する世界各国の状況をまとめた2019年度版の年次報告書を発表した。
ポンぺオ国務長官は、中国について「国家が主導し、あらゆる宗教への弾圧を強化し続けている」と批判した。中国共産党政権による宗教弾圧は断じて容認できない。
米国務省が報告書を発表
報告書は、100万人以上のウイグル族やイスラム教徒の少数派らが、収容所で洗脳されたり、拷問を受けたりしていると指摘している。ウイグル族を不当に拘束し、その信仰を根絶やしにしようとすることは、中国共産党政権による強制的な同化政策に他ならない。
中国の新疆ウイグル自治区では、ここ数年でイスラム教を消滅させる動きが加速している。在日ウイグル族の証言によれば、イスラム教徒にとって極めて重要な宗教行事のラマダン(断食月)も許されない。
ラマダンは約1カ月間、日の出から日没まで飲食が禁じられるが、今はラマダン時でも昼に食べなければならない。かつて昼間は開いていなかったウイグルレストランも、現在は営業しないと収容所行きになりかねないという。女性は頭を覆うスカーフを禁止され、長いスカートをはいていると当局に切られてしまう。イスラム教徒の尊厳を踏みにじる行為である。
こうした弾圧を受けているのはウイグル族だけではない。ポンペオ氏は先月、25年前にチベット仏教第2の高位者パンチェン・ラマに認定され、その後間もなく拘束された男性の居場所を直ちに公表するよう中国に要求した。
信者が崇拝する神聖な人物を捕らえることは、チベット仏教の抹殺につながりかねない暴挙だ。ポンペオ氏は「チベット仏教徒は、政府に干渉されることなくその伝統に従って宗教的指導者を選出、教育、崇拝できなければならない」と述べた。当然の見解である。
今回の報告書によれば、中国政府は全ての宗教の教義とその実践を中国共産党の考えに沿ったものにする「中国化」の取り組みを継続している。中国化によって、共産党のプロパガンダが説教に取り入れられ、キリスト教会の十字架が撤去されている。信仰者にとっては最も耐え難いことであり、こうした共産党政権の押し付けを座視することはできない。
米下院は先月末、ウイグル族の弾圧に関わった中国当局者に制裁を科すようトランプ大統領に求めるウイグル人権法案を可決した。既に上院を通過しており、トランプ氏が署名すれば成立する。
1月には、チベット族の人権や信教の自由を擁護する「チベット人権法案」も可決した。自由、基本的人権などの価値観を共有する民主主義国家は、信教の自由を踏みにじる中国への圧力を強めるべきだ。
日本は厳しい姿勢示せ
日本では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期となった中国の習近平国家主席の国賓来日に、自民党内から反対意見が出ている。
政府は中国の宗教弾圧に厳しい姿勢を示すべきだ。