宜野湾市長選の敗北で翁長知事の訪米取り止めか
激震・翁長県政 「オール沖縄」の凋落(中)
自公は結束、革新に亀裂
沖縄のメディアは、翁長雄志知事を中心に結束する辺野古移設反対勢力「オール沖縄」を過大評価するあまり、辺野古移設を容認すれば“非県民”であるかのような扱いをする傾向がある。沖縄2大紙などは佐喜真氏に対し「辺野古移設を容認するかどうか」と質問し、何度も踏み絵を踏ませようとした。
志村陣営は「相手候補との違いは辺野古移設反対か否かだ」と迫り、辺野古移設を争点化しようとしたが、「安易に相手の土俵に乗らない」(佐喜真選対)ことが奏功した。
沖縄選出参院議員の島尻安伊子・沖縄北方担当相は年頭の自民党県連大会で「2016年は反転攻勢の一年にする」と決意を表明した。窮屈な言論空間に風穴を空け、「オール沖縄」勢力の暴走に歯止めをかけることを誓った。
約6000票の差は、反転攻勢に出るには十分な結果だった。自民党県連の具志孝助幹事長は「幸先の良いスタートが切れた」と安堵の表情を見せ、「6月の県議選と7月の参院選に向けていい流れができた」と喜んだ。
一昨年前の知事選では辺野古移設問題がネックとなり公明は自主投票を選んだ。宜野湾市長選では、辺野古移設について事実上の棚上げをし、自公が再び結束を示した。辺野古問題は日米両政府による決定事項で、地方自治体が口を挟むべきではないというスタンスで一致した結果だ。
公明は現在、辺野古移設が原因で県議会で中立の立場を取っている。ところが、「この問題で県と政府との対立が先鋭化したことで翁長氏に対する不満は大きくなっている」とある公明党議員は話す。自民党県連幹部も、「県議選では自公がもう一度、しっかり連携して、過半数を取り戻しにいく」と気を引き締めた。
一方、革新陣営は、「候補は『オール沖縄』にふさわしい人物だったが、選挙運動に(革新)色が出すぎたかもしれない」と敗因を分析している。選対本部長代行を務めた伊波洋一元市長を“戦犯”にし、参院選の革新系統一候補から降ろす計画も浮上している。「オール沖縄」を旗頭に表向きは結束しているかのように見えるが、革新政党・団体の間に不協和音が広がる。
中立系では、下地幹郎参院議員(おおさか維新)は終盤になって佐喜真氏支援に回った。儀間光男参院議員(無所属)、宜野湾選出の呉屋宏県議(無所属)は志村氏を応援した。今後の県内政局は波乱含みだ。
敗戦を受けて、名護市の稲嶺進市長は「今回の選挙結果は宜野湾市民が辺野古移設を認めていることにはならない」と苦しいコメント。翁長氏は「県民の大半は辺野古に反対している」と発言、これまでの姿勢を変えないことを確認した。
25日朝、「オール沖縄が崩壊しているのでは」と記者団に問いかけられた翁長氏は「それはあんたらが決めなさい」と言い捨てた。苛(いら)立ちは隠せないようだ。
翁長氏は2月にも名護市長と宜野湾市長を引き連れて訪米要請行動をする段取りを進めていたが、宜野湾市長選の敗北を受けて取りやめを余儀なくされそうだ。
そもそも、志村氏は、市民の利益と直接関係のない「辺野古移設反対」を最大の公約に掲げた。代替案のない普天間飛行場の閉鎖撤去はあまりにも無責任で市民目線とはかけ離れていたと言わざるを得ない。翁長氏は、辺野古埋め立て承認取り消しをめぐる国と県の「代執行訴訟」など、複数の辺野古関連裁判で敗訴しても「民意は辺野古反対」と訴えるつもりだったようだが、それもできなくなった。
(宜野湾市長選取材班)