宜野湾市長に佐喜真氏再選、辺野古移設の明確な民意示す

「オール沖縄」の欺瞞性露呈

 任期満了に伴う沖縄県宜野湾市の市長選が24日、投開票され、現職の佐喜真淳氏(51)(無=自民・公明推薦)が、翁長雄志知事や革新団体の支援を受けた新人の元県職員・志村恵一郎氏(63)(無)を破り、再選を果たした。市の真ん中にある普天間飛行場の移設問題では、名護市辺野古への移設を容認する民意が示される形となった。一方、翁長氏が辺野古移設反対は県民の総意とする主張はもろくも崩れ去った。(那覇支局・豊田 剛)

辺野古移設の明確な民意示す

宜野湾市長選で再選を果たし、花束を手に喜ぶ佐喜真淳夫妻(手前)=24日夜、沖縄県宜野湾市

 佐喜真氏は24日、「本当に厳しい選挙だったが、自民・公明両党の後押しを受け、戦い抜いた結果」と支援者にお礼をした上で、「宜野湾市の発展と市民の福祉向上をし、元気で明るい宜野湾市を一緒につくっていこう」と呼び掛けた。

 各マスコミが大接戦と予想したが、ふたを開けてみれば5857票差という大勝だった。佐喜真氏は自公、志村氏は民主、社民、共産などの革新層の票固めはできたが、大きく左右したのは無党派層とも言われるサイレントマジョリティーだった。

 辺野古移設が争点となった沖縄県内の選挙では、名護市長選、知事選、衆院選4選挙区で移設反対派が勝利した。政府および県政野党にとって、宜野湾市長選で勝利することは、辺野古移設推進の必須条件。さらに6月に控える県議選で巻き返しを図り、7月の参院選で勝利するためにも不可欠だった。

辺野古移設の明確な民意示す

宜野湾市長選挙で敗れ、厳しい表情の志村恵一郎氏(左)と翁長雄志沖縄県知事=24日夜、沖縄県宜野湾市

 一方、「オール沖縄」や「沖縄の民意」を大義として辺野古移設阻止を主張してきた翁長氏を中心とする革新陣営にとっても絶対に負けられない戦いとなった。

 その結果、今回の選挙は、辺野古移設を推進する政府とあらゆる手段を使っても阻止したい翁長氏による「代理戦争」の構図となり、佐喜真、志村の両陣営には全国から支援者が詰め掛け、国政選挙並みの総力戦を展開した。

 特に志村陣営は、告示の1カ月以上も前から街宣カーが走りだし、街頭演説が白昼堂々と行われていた。告示後は翁長氏も公務そっちのけで志村氏と一緒に街宣活動を行った。

 運動の中心は共産党や労組だったが、革新色を出し過ぎると保守層の切り崩しができなくなるとの判断から、共産党のカラーは一切出さなかった。打ち上げ演説でも、沖縄1区選出の赤嶺政賢衆院議員(共産党)に演説の機会を与えないという異例の措置を取った。

 相手候補が、翁長氏を前面に押し出しながら全国の組織ぐるみの選挙運動を展開したことについて、佐喜真陣営選対本部長の安次富修元衆院議員は、「この戦いは市民の勝利。皆どうにかしなければならないと自発的に盛り上がった。市民の圧倒的な民意だ」と強調。全国から集まった革新系運動員がなりふり構わず展開したネガティブキャンペーンに対して市民は明確な意思を示したことを評価した。

 宜野湾市を含む沖縄2区の宮崎政久衆院議員は「普天間飛行場の危険性除去、固定化阻止という民意が示された」と述べた上で、「常識的な判断を表明していいという環境を持つための大きなステップになる」と評価した。

 自民党県連副会長の照屋守之県議は、「ここではっきりした民意が示された」と述べ、県議会で「オール沖縄」の欺瞞(ぎまん)性を追及していく考えを示した。

 翁長政俊・同副会長は、「これまでの『オール沖縄』の流れがいったん止まることになる。新しい民意が出たことで知事は県政運営を冷静になって判断し、民意の多様性を受け止めてほしい」と語った。

 NHKの出口調査によると、辺野古移設を支持する割合は57%に達した。

 辺野古容認の民意を後押ししたのは、翁長氏を訴えた宜野湾市民による集団訴訟だ。平安座唯雄元市議を団長に112人の原告が辺野古埋め立て承認取り消しをした翁長氏を訴えているもの。この裁判を支援するための署名は宜野湾市民だけで2万筆を超えた。

 平安座氏は「裁判が大きな影響を与えたのは確かだ。20年も動かなかった普天間飛行場を確実に動かそうという話。マスコミは沖縄はまるで辺野古反対のように言っているが、これが民意だ」と喜んだ。

 選挙事務所では「翁長知事は辞めろ」というコールも上がるなど、翁長県政への不満の大きさをうかがわせた。


佐喜真淳市長インタビュー

 以下は佐喜真淳氏と記者団の一問一答。

 ――選挙の勝因は?

 スタッフや市議団、後援会、各種団体らが危機感を持って取り組んだ結果。もう一つは1期4年間の実績を市民が評価してくれた。

 ――普天間飛行場の返還についての民意をどう解釈するか。

 一番の犠牲者は宜野湾市民だ。街のど真ん中にあること自体が返還合意の原点。合意から20年がたち、市民がこれ以上我慢できないということが民意として表れた。固定化は言語道断だという市民の心底からの叫びがあった。

 ――辺野古移設についての考えは?

 われわれは足元の暮らしや生活、現状に危機感を持っている。その中で現実的な対応をしている中での評価だと思う。