「公明」特集のアフリカ協力 中国問題ぼやける理想論

「競争」批判して連携主張

 アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されるのを控え、公明党の機関紙「公明」9月号は、特集内に「対アフリカ協力に向けた政治的責任を考える」として京都大学大学院教授、神戸大学名誉教授の高橋基樹氏の記事を掲載した。

 ちなみにTICADは1993年、8党会派連立の細川政権で始まり、連立に加わった公明党は自民党より先に関わっている。TICAD1の共同議長を務めたのは、国連職員を経て公明党衆院議員になった東祥三外務政務次官だった。

 同誌で高橋氏は、TICADに際してアフリカを「最後のフロンティア」など肯定的に見ることが多くなったが、現実は依然厳しいとデータを示し、また、報道などの関心が中国との競争に集中しがちだと批判している。

 その上で、「自国第一主義・国益優先の嵐が吹きすさぶなか、むしろ途上国の抱える課題に正面から向き合い、自らの知恵と経験を用いてその解決に貢献し、人々の豊かな生活が実現できるような人類社会の共創を主導していくこと、日本の活路はむしろそこにある」と主張した。

 安倍政権下のTICADは3回目になるが、初期のTICADの方を「日本が自国の利害をおいてアフリカへの開発を真摯に追求した」と評価し、「政府は、中国との競争への関心の集中を軌道修正せず」にいると苦言を呈した。現在のTICADを「自国第一主義・国益優先」と同列に見ていると言えなくもない。

 また、日本に「人類社会の共創の主導」という理想を説くことで、中国の覇権主義問題をぼやけさせている印象を受ける。中国のアフリカなどへの投資に対して「債務の罠(わな)」など不評があるのも事実だ。借金漬けにしては豊かな人類社会から程遠く、それ故に増大する対中債務に苦しむ国々の状況に、内外のマスコミが警鐘を鳴らしてきたのだ。

 この問題を抜きに、日中はアフリカ開発で「連携を模索されてしかるべき」だと主張しても、「自国第一主義」で暴走する中国とでは、「罠」に加担する上、存在感が埋没するだけだ。

編集委員 窪田 伸雄