「自由民主」に党外交/トップに日中与党交流
「一帯一路」へ誘う中国
8月の安倍内閣改造と自民党役員人事の後、同党機関紙「自由民主」1面記事は、「第6回日中与党交流協議会」「新しい時代に相応しい日中関係を」(8・29)、「青年局海外研修団がベトナム訪問」(9・5)など、党外交が連続した。
日中与党交流協議会は、自公両党と中国共産党との定期交流の枠組みで開催されてきたものの、2009年以来中断した。同紙(8・29)は、8月7~9日に開催された「今回は、2015年の中国での第5回に続く日本開催となった」と日本での再開を評価した。親中派の二階俊博幹事長、岸田文雄政調会長ら60人以上の衆参国会議員が参加し、中国側から宋濤中国共産党中央対外連絡部長を団長とする代表団が参加した。
09年1月に開催して以来中断したのは、同年夏の衆院選で野党になったためだが、政権を獲得した民主党の鳩山由紀夫首相の「東アジア経済圏構想」や小沢一郎氏らの訪中大議員団という背景もあった。が、民主党政権は尖閣諸島を国有化し、反発した中国は強硬に領海侵犯を繰り返している。
12年末に第2次安倍政権が発足すると中国は韓国を巻き込んで国際的な反日キャンペーンを展開。戦後70年の15年、二階幹事長が訪中し習近平国家主席に安倍首相の親書を渡すなど、関係改善を模索し、同年12月に中国で同協議会が再開された。
同紙によると、今回の協議会で基調講演した二階氏は「5月の『一帯一路』ハイレベル・フォーラムで北京を訪問した際の習近平国家主席との会談にも言及し、春の暖かさが訪れつつある日中関係の確かな手応えも語った」という。
また、4年7カ月外相を務めた岸田政調会長は、「『政治的信頼関係の構築と政治的イニシアティブの強化』というリードスピーチを行い、今後の日中関係の改善に対する期待感を示し」、「両国間の協力拡大の必要性を語った」という。
同9日、宮城・仙台での閉会式で日中の与党は共同提言を発表、同紙2面に掲載している。これによると、2項目に「両国の経済実務協力のためのプラットフォームと環境を積極的に作り、貿易・投資、省エネ・環境保全、財政・金融、科学技術・イノベーション、社会保障の分野に重点を置いて協力を推進していく。『一帯一路』構想をめぐる具体的な協力を積極的に検討し、経済のグローバル化推進と地球規模課題への対処のために共に貢献していく」とある。
中国の狙いは「一帯一路」戦略への日本の技術力の動員だ。さらに財政・金融協力ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加も求めてこよう。5回目から今回6回目の開催まで2年の間があったが、次回7回目は今年「第4四半期に中国において開催」。中国共産党大会終了後、新たな動きがありそうだ。
中国は、南シナ海の人工島など力による現状変更を行い、尖閣問題も依然として深刻で警戒を解くことはできない。安全保障と経済協力の釣り合いをどう取るのか難しい舵(かじ)取りが迫られそうだ。
編集委員 窪田 伸雄