女性活躍の「公明」特集/制度より教育で増やせ

指導的地位を目指す女性

 今年は女性議員受難の年と見え、蓮舫、稲田朋美、山尾志桜里、豊田真由子、今井絵理子の各氏らが、選挙、失言、暴言、不倫などさまざまな理由でマスコミを賑(にぎ)わした。これも女性議員が増えた証拠と思われたが、日本の女性の社会進出、特に政治の分野は低いと、公明党の機関誌「公明」10月号は問題視している。

 同誌は、「女性活躍のアクセルを踏む」を特集し、巻頭座談会「ジェンダーギャップを日本はどう埋めるのか」に、京都大学名誉教授・大獄秀夫氏、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子氏、一橋大学大学院教授・中北浩爾氏、公明党女性委員会委員長・衆院議員の古屋範子氏を登場させた。

 ここで、世界経済フォーラム(ダボス会議)が経済、政治、教育、健康の4分野から男女格差を数値化した指標の「ジェンダーギャップ指数」が低い(=男女格差が大きい)ことに注目(2016年、144国で日本は111位)。大獄氏は「指数の足を引っ張っている中でも日本は女性議員の比率が極端に低い」と指摘し、政府が掲げる20年までに指導的地位の女性割合30%の実現は「無理」と切り捨てた。

 対策として、「女性が立候補したら必ず2万票上乗せする」(大獄氏)、「5年ないし長くて10年、クオータ制を実施することによって、女性たちが育つ機会を持つ」(坂東氏)などの提案をしている。

 しかし、制度で数を増やしても形だけになりかねない。既に各党は女性票を期待できる女性候補の擁立に熱心で、冒頭の議員らも乞われて国政に出馬した。もっと志望者が増えないとクオータ制(割当制度)はうまく機能しないだろう。

 古屋氏は、同党は「全国約3000人の議員がいる中で900人超が女性」で「30%」を超えているが、「国会議員」では少ないと述べている。公明党は国政で女性議員を増やすつもりなのだろうか。

 同特集は他に、「ジェンダー平等への自分なりのアクションを」(国連広報センター所長・根本かおる氏)、「女性管理職の育成阻む『遅い昇進』を改めよ」(東京大学社会科学研究所教授・大湾秀雄氏)、「女性の活躍推進は男性の意識改革から」(福井県立大学看護福祉学部教授・塚本利幸氏)などを載せた。

 ただし、女性の意識にも課題があると触れてほしい。「女性のキャリア意識」に関するNTTコムリサーチと大妻女子大学による共同企画調査(14年)によれば、「将来の職場でなりたい立場」の問いに、「職場のリーダーとしてチームを率いる」は最低だった(働いている女性で9・7%、女子大生8・4%)。意志がなければ道はない。

 意識を変える方法に教育がある。男女共同参画がそれで、座談会登場者らはジェンダー・フリー教育への批判に不快感を示す。が、同教育では男女混合名簿にし、男子も「さん」呼びにし、さらにはトイレの色・表示に「性差」を咎(とが)めるような事例さえあった。何か筋違いだ。指導的地位を担う可能性を育み、指導的人物を目指す志望者が増える教育が必要だ。

編集委員 窪田 伸雄