「テロ等準備罪」共産党の反対
底流に暴力路線とった過去、「治安維持法」背景に革命
参院で15日に「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が可決し、同法は改正された。法改正の目的は世界187カ国が締結する国際組織犯罪防止条約を締結するためだ。同条約はネットの発展とともに国際化する資金洗浄、麻薬密売などの組織犯罪に対処するため2000年に国連で採択され、日本も署名した。
しかし、条約は締約国に重大犯罪の共謀または組織的犯罪集団への参加の少なくとも一方を犯罪とすることを義務づけているため、わが国は法整備の必要があった。共謀罪新設では3度挫折。今通常国会では共謀罪の対象犯罪を277まで減らし、呼称を「テロ等準備罪」と改めた。
ここ数年、ネットを活用する「イスラム国」(IS)など過激派組織が国際的にテロを扇動している。英国マンチェスターでは、10代の少女ファンが多く詰めかけていたアイドル歌手のコンサートさえ狙われた。テロの既遂となれば犠牲は大きい。このため、共謀罪新設にはテロ計画を実行する準備段階の摘発を可能とするテロ対策の必要が増してきていた。
これが条約署名以来17年も難航したのは、安保法制や憲法9条改正への反対と同様に「戦争の過去」とダブらせる共産党、旧社会党の思潮を受け継いだ民進党内勢力および社民党などが頑強に反対したためだ。
共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(6・14)は、13日に東京・日比谷音楽堂で開かれた「共謀罪を廃案に!安倍改憲NO!6・13市民集会」の記事を1面から展開。志位和夫委員長のスピーチを2面に掲載した。志位氏は「犯罪の構成要件があまりに曖昧なために、権力による著しい乱用によって、暗黒社会をつくった最悪の治安立法を、日本国民は体験しています。1925年につくられた治安維持法です。……監視と弾圧の対象はどこまでも広がり、反対の声をすべて押しつぶして、侵略戦争への道を開いた」と述べた。
ほぼ同様に反対派は治安維持法を持ち出す。ならば同法制定の背景に、ロシアで共産主義者が暴力革命(1917年)を起こし、ロマノフ王朝最期の皇帝ニコライと家族(アレクサンドラ妃と王女4人と皇子1人)を皆殺しにした衝撃があったことに触れてほしいものだ。革命は王を殺す―、日本で革命が起きれば天皇、皇族を処刑するということだ。まだ江戸時代に生まれた政治家が明治憲法の下で統治していた世の中だった。日本の歴史には武士がどんなに兵力を持ち権力を得ても天皇を殺す発想はなかったのである。
ところが当時の日本に、国王・資本家ら支配階級を暴力革命で打倒し労働階級を代表する一党独裁に向けて階級闘争を行う共産主義が入ってきた。日本共産党はコミンテルン(共産主義政党の国際組織)の指導で1922年に結党した。
共産主義がテロと革命を世界に拡散した事実は日本も例外ではなく、戦後にかけて共産党や他の共産主義団体が革命を起こすための闘争として殺人を含む数々の暴力事件を起こした。その過去を「弾圧」にすり替えて反省しないことが「共謀罪」反対の底流にあることは否めまい。
編集委員 窪田 伸雄