憲法スルーの「民進」

政策資料的編集は2度目、党内軋轢尻目に無難な装い

 民進党の機関紙「民進プレス」が3月17日号から第3金曜日の月1回発行になりレイアウトを変えたが、月2回発行の2月17日号以前の紙面と比べると、機関紙的な党の主張や訴えの要素が薄くなり、ワン・テーマの政策を淡々と特集する内容になった。

 4月21日号が特集「医療・介護の大事な話」、5月19日号は特集「経済の屋台骨、中小企業を支える」。タブロイド判で1面の半分ほどのイメージ写真に特集の見出しを書き、総論的な記事が載るほか、3面・6面にデータや党の政策を載せ、4面~5面は見開きの座談会で関係業界から代表的な人々が登場する。

 1面には「3・4・5・6面を抜き出すと特集記事だけを保存できます」と両号とも断り書きがしてあるので、党員向けの政策資料と位置付けて、街頭遊説などに実用的に役立てるつもりであろう。

 しかし、「民進プレス」は静かに落ち着いてしまった印象である。特に日本国憲法施行70年で注目されている憲法に関して両号とも全く扱っていない。東京都議選や近づいている次期衆院選についての扱いもない。これは紙面の性質の著しい変化と言わざるを得ない。

 実は民進党の前身・民主党の機関紙だった「プレス民主」時代も紙面の変化があった。政権にあった2011年8月にA4判12ページのパンフレットのような構成にし、党の活動や選挙に向けハッパを掛ける内容よりも、政策中心の編集路線をとり「チルドレン・ファースト」などを唱えた。

 しかし、当時の民主党と今の民進党で共通することは、党内がガタついていることだ。11年8月といえば菅直人首相が退陣し、同党代表も辞任、これに伴う代表選挙が行われた。小沢一郎元代表らのグループとの確執を背景とした“菅降ろし”の結果で、党内の遺恨は代表に選出された野田佳彦首相の下で消費税増税をめぐって党の分裂に発展していった。

 党活動を中心とした機関紙にするとどうしても党執行部の幹部たちが登場する回数が多くなる。しかし、党内がバラバラになると、そのような機関紙に不満も出たのではないか。

 今回、「民進プレス」は憲法をスルーしたが、同党に騒動があった。改憲私案を発表した細野豪志代表代行が4月13日、改憲に消極的な蓮舫代表の執行部に不満を表明して代表代行を辞任。また、党内きっての改憲派で外交・安保通だった長島昭久衆院議員が同10日に離党届を出した。共産党との共闘に反対してのことだ。一方、蓮舫代表は5月3日に東京で開かれた護憲集会に共産党の志位和夫委員長らと出席したと共産党機関紙「しんぶん赤旗」(5・4)はアピールしている。

 都議選を控え「民進プレス」1月20日号に公認候補一覧が載ったが、その後、「民進党」では不利とみて都議会会派名称を変更したり離党者が出る始末だ。

 機関紙は執行部に求心力があって編集に力が入るはず。党内対立や軋轢(あつれき)を尻目に党内に無難な政策を扱う「民進プレス」の装いがある種の偽善にさえ思える。

編集委員 窪田 伸雄