経済強調する「公明」、安定政権で脱デフレ優先
憲法改正は「議論深める」
公明党の機関誌「公明」9月号は、「安定政権で始動、日本に希望を」との特集で参院選の総括と今後の同党の政治を展望した。
巻頭の「井上義久・党幹事長に聞く」で井上氏は、「合計14議席の獲得自体は1992年以来24年ぶりだが、その間に議員定数削減があったことを踏まえれば、実質的に過去最高の大勝利だ」と述べ、「衆院選と統一地方選、そして今回の参院選を通して、日本の政治が一層安定したものになった」と総括している。
また、同誌編集部の「第24回参院選の結果分析」でも、冒頭で「『安定の自公か、混乱の民共か』が最大の争点となった今回の参院選。自公両党は……非改選議席を合わせると146議席となり、全議席の半数(121)を25議席超えた。……自公連立政権の下での政治の安定は、より確かなものとなった」と、安定政権を強調している。
その中で優先する課題は、「未来への経済成長を促す経済対策の早期実行が重要だ」(井上氏)、「参院選を受けて、自公連立政権による経済対策への期待はさらに高くなったのは間違いない。特に、公明党が主張してきた成長の実感を家計や地方、中小企業に届けるための具体化に高い関心が寄せられており、速やかな政策実行が必要だ」(同誌編集部)、「有権者はデフレ脱却や社会保障の充実などの舵取りを引き続き現政権に託したと言えるだろう」(同誌編集部)など、経済対策を強調している。
一方、同誌編集部は「今回の選挙結果について、参院も憲法改正の国会発議に必要な3分の2議席以上に達したとして、メディアの中には、『憲法改正に真剣に取り組むべき時がきた』(産経・7月11日付)とする見方もある」ことについて、「今の日本に『改憲も脱デフレも』と二兎を追う余裕はない」との7月11日付日経の記事を引用し、「脱デフレに全力を注ぐことこそ、民意にこたえる道にほかなるまい」と牽制している。
自民党も経済政策「アベノミクスの加速」を争点に掲げたが、「参院選では一部メディアが『改憲勢力』対『護憲勢力』の構図を設定し、野党も『改憲阻止』を主張するなど、無理やり争点にしようとする動きもあった」と「党幹事長に聞く」で問われた井上氏は、「公明党は日本国憲法は優れた憲法だと評価している。……その上で、戦後70年がたち、新しい時代の下でしっかり議論し、改正が必要になった場合は新たな条文を加える、加憲という考えだ」と同党の立場を確認した。また井上氏は、自民党と交わした連立政権合意で「憲法改正に向けた国民的な議論を深める」と明記してある通り、「落ち着いて議論を深めていくことが何より大切だ」と述べている。
護憲野党から出発した同党にとって憲法問題は自公政権の「安定」に関わる。ただし、憲法改正を視野に置く衆参3分の2の勢力の意義は重い。「同紙編集部」のように改憲を牽制するより、憲法改正論議を国会で成熟させる役目が公明党にあるはずである。
解説室長 窪田 伸雄