共産党の選挙疲れ、「小池新党」に危機感か

「赤旗」3万部減でテコ入れ

 「もっと伸びると思いガッカリしていたが、野党と市民の共闘の画期的前進がリアルにわかり元気が出た」「モヤモヤ感があったが、安倍首相を先頭にした野党共闘攻撃、共産党攻撃と正面からたたかい前進した意義がつかめスッキリした」――。これは日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(8・9)に載った同党中央委員会書記局が8日に発した文書「党創立94周年記念講演の一大学習運動を力に、情勢が求める強く大きな党へ前進を」に掲載された同講演への感想だ。

 「参議院選挙と東京都知事選挙の結果と今後を生かすべき教訓を解明するとともに、安倍暴走政治を転換していくたたかい、野党共闘の課題と展望を具体的に明らかに」したという志位和夫委員長の同講演(5日、東京・北区の北とぴあ)のDVDや全文掲載した同紙などの視聴・読了を徹底させて党員のネジを巻こうというのだ。

 志位氏は講演(7日付)で都知事選、参院選とも「大きな成果」としているが、都知事選について鳥越俊太郎氏の“健闘”を冒頭でそこそこに称(たた)え、後の大部分は参院選に話を費やしている。1人区11選挙区で野党共闘が勝利したことだ。

 しかし、当選者は他党の人々。また、ガッカリ、モヤモヤは都知事選で深刻になったのではないか。自民・公明の与党が推した舛添要一前都知事が不祥事で辞任。自民党から抜け駆けの出馬をした小池百合子氏(現都知事)、自公は増田寛也氏を擁立と与党側は分裂。一方、野党側は共産党が前回推した宇都宮健児氏が告示直前に立候補撤回のカードを切り、参院選の野党共闘そのままにテレビで顔を売る鳥越氏に一本化した。

 見事なフェイントで、当初は鳥越氏が有利な状況だったが、結果は小池氏が断トツの291万票で当選、鳥越氏は共闘した民進、共産、生活、社民の4野党の参院選比例票を合わせた248万票から100万票以上少ない134万票で、179万票を得た増田寛也氏にも負けた。共闘のカウンターパートの民進党・岡田克也代表は、投開票日1日前の選挙中に代表選不出馬で退陣表明をした。

 8月に入ると、早くも「小池新党」に期待が高まっている。危機意識を抱いたのか、志位氏は同講演で野党共闘にこそ展望があるとひたすら強調している。党員に向かって、「日本共産党綱領の統一戦線の方針が、国政を動かす、戦後かつてない新しい時代が始まっている」と訴え、野党共闘は綱領路線の統一戦線方針であると明言した。

 さらに、今後の共闘に当たっては党綱領を語るように指示している。これは、参院選比例代表601万票には「反共攻撃」で他に流れる票が「相当数ある」(同中央委員会書記局文書)と考えているためだ。

 2日付「赤旗」に載った「7月の党勢拡大」では日刊紙「赤旗」読者は6559人減、日曜版2万8856人減で、合わせて3万以上の大きな後退となった。選挙疲れの上、小池百合子氏に大量に票が流れたことに躍進後の退潮を案じ、テコ入れを図るだろう。

解説室長 窪田 伸雄