民主に苛立つ共産党、安保廃止「法案と選挙は別」
日経「候補取り下げ」に抗議
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」13日付2面に「『日経新聞』に抗議、訂正要請/共産党広報部」、「日経報道は『事実無根』/野党共闘 小池政策委員長が会見」(見出し)の記事が載った。12日付日経の「参院選1人区 共産、候補取り下げ柔軟に」「野党一本化を優先 衆院補選でも検討」(見出し)の記事に対してだ。
日経記事は、安保法廃止法案を5野党が共同提出するのを契機に共産党が「協力優先の姿勢を鮮明にする」として、「共産党幹部は『法案の共同提出を大義に選挙協力を柔軟にできる』と他の野党に伝え」、「共産党中央委員会はこのほど、各県の委員会に候補取り下げもあり得るとの方針を通知した」と記述し、「野党候補を一本化した場合は7の1人区で与党を逆転する」などと書いている。
類似したシミュレーション報道は、安保法が成立した昨年9月19日に志位和夫委員長が「『戦争法廃止の国民連合政府』で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おう」と提起して以来、各メディアで頻出した。だからこそ、元朝日新聞記者の早野透氏が志位氏との新春対談(日曜版1・3)で「政局のテーマ」と持ち上げたのだ。
鍵となる「安保法廃止の一点」の野党間協力は、5党が19日に安保法廃止法案を共同提出することで担保されたと見ての日経記事だろう。ところが、これを共産党は打ち消しにかかった。
「赤旗」によれば、小池晃氏が「反対した5党で廃止法案を出すことは重要だが、選挙協力ではそれとは別に真剣な協議が必要だ」と述べている。また、小池氏会見、党広報部抗議とも「しっかりとした合意が必要であり、協議抜きの一本化はできない」「真剣な政党間協議を呼び掛ける」との志位氏の1月14日記者会見内容を強調した。同法反対以上に「国民連合政府」で野党共闘の枠組みに入ることが共産党の目的なのだ。が、「現時点で、民主党はわれわれの提起に対する回答がない」(小池氏)。となると日経記事よりも、政党間協議に応じない民主党にしびれを切らせたとも言える。
共産党は自主的候補取り下げによる民主党躍進で埋没した前例がある。二大政党制を「財界が仕組んだ反共攻撃」とも批判してきた。その復活は“悪夢”であり民主党が伸びる選挙協力は避けたいのが本音だ。衆院北海道5区補選では候補取り下げの条件を地方組織の政党間協議合意に下げたが、「当選後は無所属」にはこだわる。参院熊本選挙区の野党一本化候補のあべ広美氏には「当選後も『特定政党に属さない』」(「赤旗」2・12)と報じている。
今年の共産党は宜野湾市長選、京都市長選と連敗している。京都市長選では民主党も相乗りする現職との対決で、前回46・1%だった得票率を32・3%に落とす惨敗だった。その苛(いら)立ちか、16日付「赤旗」1面では反安保法デモ参加者の声を借りて「野党は共闘」と訴え、2面では政党間協議がなければ衆院京都3区補選でも独自候補擁立の方針を示した。民主党にデモと独自候補で圧力を掛ける構えだ。
解説室長 窪田 伸雄