「経済」で臨む自公、“敵”は海外、株安・TPP
逃げられない「憲法・安保」
通常国会の論戦では安倍晋三首相が憲法改正について前向きな答弁をしている。また、安保法制に反対する野党は繰り返し争点化を試みようとしている。参院選に向けて世論上の注目を集めるテーマだが、与党のメディアを見ると、国会や参院選はあくまでもアベノミクスを主眼にした「経済」で臨む方針である。
自民党機関紙「自由民主」の新年号(1月5・12日号)トップの谷垣禎一幹事長インタビューの見出しは「政治の安定に参院選勝利を」「『国民政党』として、経済で結果出す」。谷垣氏は「国会の最重要テーマは第2ステージに入った『アベノミクス』によるさらなる経済再生です。必要な景気対策を考慮すると、平成27年度補正予算と同28年度予算の早期成立は欠かせません」と強調した。
公明党の機関誌「公明」2月号巻頭の「山口那津男代表に聞く」は、「参院選勝利に向けて全力」「景気回復を実現し、社会全体の好循環つくる」の見出し。「今年最大の政治決戦が参院選だ」の問いに、山口氏は「今、国民が最も望むのは、さらなる景気回復と生活環境の改善だ。自公連立政権がデフレ脱却に向けて打ち出した数々の経済戦略は、わが国経済を全体として良い方向に向かわせているが、景気回復の実感は全国津々浦々まで浸透しているとはまだ言い難い。そこで政府は新しい3本の矢として賃金の引き上げ実現をはじめ、出生率の改善や介護を理由に離職する人をなくすための対策などを打ち出し、国民の要望に正面から向き合う姿勢を明確にした。その取り組みが成功するかどうかの重要な局面で迎えるのが、今回の参院選の特徴の一つだ」と答えている。山口氏もまた「新しい3本の矢」、つまり「アベノミクス第2ステージ」を訴えた。
新3本の矢は①GDP(国内総生産)600兆円(強い経済)②出生率1・8(子育て支援)③介護離職ゼロ(社会保障)―を目標としており、そもそも参院選までに結果が出るようなものではない。方向性に国民がどこまで共感するかの問題だろう。
それを占うのが補正予算、本予算の執行や各経済指標となるが、前者をめぐる論議では野党が高齢者給付金などに「バラマキ」「税金で選挙対策」などと水を掛け、後者は中国リスク、原油安から新年早々の株価下落に見舞われている。野党の批判には、民主党政権との比較という“カウンターパンチ”が依然有効だが、中国・中東などの海外要因の経済不安は手強く、視界不良となりかねない。
環太平洋連携協定(TPP)でも海外からの関税撤廃圧力は地方で農政批判を生んでいる。これら海外要因はアベノミクスへの「共感」か「反目」かの評価に少なからず影響するだろう。対処を誤れば野党に敵失の批判票を献上しかねない。
また、野党は安保法を昨年に続き「憲法違反」として「戦争法」反対運動を仕向けるため、安保・憲法の問題から逃げることはできない。選挙前に必ず起こる世論戦であり、与党側も機関紙・誌で確たる主張や論戦に臨む必要があろう。
解説室長 窪田 伸雄










