「政局」下の共産党、新春に霞む「国民連合政府」

その後「赤旗」で強調せず

800

天皇陛下は第190通常国会の開会式で、お言葉を述べられた=4日午後、参議院本会議場

 日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版1月3日号の新春対談は、案の定「国民連合政府」の宣伝だった。志位和夫委員長と社民党の月刊機関誌「社会民主」にも連載を持つ元朝日新聞コラムニストの早野透氏によるもので、1面見出しは早野氏の写真側に「『国民連合政府』志位さんからオーラ」、志位氏の写真側に「政治を変えるにはこれしかない」。

 安保法制反対デモに参加したという早野氏は、「これまでの共産党の提案は『なるほど正論だな』と思うけど、僕らの言葉でいえば『政局』に入ってこなかった。でも今回は政局のテーマになっている。ここが面白い」などと述べ、持ち上げ役を買っている。

 「国民連合政府」について志位氏は、安保関連法廃止の「一点での政府ですから、暫定的な性格の政府になります」と説明。これに早野氏が、「分かりやすいんですが、『さしあたり、横に置いて、とりあえず、暫定政権』みたいのでいいんでしょうか?」と尋ねると、「そこがいいんです」と志位氏が我が意を得たりの答えをしている。

 この箇所は見出しどころの一つだ(4面)。共産党綱領が定める「民主連合政府」のための統一戦線は「さしあたって一致できる目標の範囲」のものであり、これに基づいて早野氏が問い掛けたようでもある。

 野党各党にそのように構想を持ちかけたのだろうが、対談中、志位氏は社民、生活の党からは「おおむね賛同」を得たが、民主党とは「安保法廃止という政治的合意も、そのための連立政府という政権合意も、選挙協力の協議に入るという合意もまだつくられていません」と報告した。

 年が明け、4日の通常国会開会式に共産党は初めて参加。これまで天皇陛下がお言葉を述べられる開会式をボイコットしていたが、これも抵抗感を和らげるソフト戦術だろう。

 が、「新春対談」後の「赤旗」紙上には「国民連合政府」の見出しが躍らなくなった。昨年9月の提案後は「赤旗」日刊紙上で識者・団体代表者など日替わりで「国民連合政府」への期待を語らせ、一大キャンペーンを張ったのが強調しなくなっている。

 代わって見出しは「野党共闘」に。「『戦争法廃止』『野党共闘』たたかいのなか国会開会」(日曜版10日号)、「参院選 野党共闘の真剣な協議を/NHK番組 志位委員長主張」(同17日号)などだ。

 読売新聞11日付には短く「『国民連合政府』現時点では困難 共産・志位氏」の記事が載った。10日、民主党の難色を理由に東京都内で記者団に語ったものだ。「赤旗」日曜版17日号は、NHK「日曜討論」で志位氏が、参院選で「日本共産党が大いに躍進すること」が「国民連合政府」の「実現にもつなが」ると述べた、と書いた。

 これは、新年に入り「国民連合政府」で野党各党が共闘するとの照準を参院選までから参院選後に延ばしたといえる。同構想に“さしあたり”でも一致できない民主党内の求めに応じ、共闘目標は選挙協力などの野党共闘にハードルが“とりあえず”下げられたようだ。

 解説室長 窪田 伸雄