「立憲民主」“初閣議”公約を掲げる

もし政権取らば報復政治、共産との溝埋める“モリカケ”

「立憲民主」“初閣議”公約を掲げる

演説を聞く有権者ら=19日午後、東京・阿佐ケ谷駅南口(森啓造撮影)

 衆院選挙に入り政党機関紙は選挙一色の遊説通りの内容だ。自民党が岸田文雄新総裁を選出し、岸田内閣が発足して間もなく解散。週刊の同党機関紙「自由民主」(11・2)は「岸田総裁『時代を切り拓く』」などの見出しで、「選挙区に277人、純粋比例代表に59人の合計336人を公認候補として擁立、選挙区に11人を推薦している」として、候補者の必勝を期している。

 一方、月1回発行の立憲民主党の機関紙「立憲民主」(10・15)は、「政治を変えよう」と見出しを取り、枝野幸男代表が全国を街頭演説に回り、「総選挙の争点として①命と暮らしを守るコロナ対策②経済政策③改ざん・隠ぺい、説明しない政治――の3点を挙げ、現政権に代わる立憲民主党政権では何を変え、何を実行するのかを訴えてい」るとアピールした。

 その内容として、同紙には「#政権取ってこれをやる」と題して8テーマを掲げている。1番目は「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」だ。その内容は①補正予算の編成(新型コロナ緊急対策、少なくとも30兆円)②新型コロナ対策司令塔の設置③2022年度予算編成の見直し④日本学術会議人事で任命拒否された6名の任命⑤スリランカ人ウィシュマさん死亡事案における監視カメラ映像ならびに関係資料の公開⑥「赤木ファイル」関連文書の開示⑦森友・加計・「さくら」問題真相解明チームの設置―だ。

 ①~③は各党ともコロナ対策を最優先に公約しており適当と考えられるが、不法滞在者に対する人権問題の⑥を除き④⑥⑦を「直ちに決定」することから、仮に立民が政権に就けば報復政治を始めると予想される。共闘する共産党にとって④⑥は要求通りであり、“立民政権”に「閣外協力」でも⑦森友・加計・「さくら」問題真相解明チームを政権が設置すれば参加する構えは見せている。

 実際、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(10・14)は、「主張」で国会各党代表質問の岸田首相答弁に対して森友・加計・桜を見る会などについて「再調査を拒み続け」たと批判。「いま国民が望んでいるのは『安倍・菅政治』の『負の遺産』の精算」との主張をして、野党の共通政策に「真相究明を行うことを銘記してい」ると念押しするなど、強い関心を示している。

 報復政治の典型的な例は韓国の政権交代で文在寅左翼政権下で行われた「積弊清算」だろう。保守の朴槿恵前大統領やサムスングループの経営トップらを投獄し、外交でも合意破りの反日政策を進めた。米国では下院に連邦議会襲撃事件を調査する特別委員会が設置されたが、トランプ前大統領の政治生命を絶とうとする民主党の狙いが濃厚だ。

 立民と共産は本来なら共産主義を目指すか目指さないかで党の基本政策が大きく異なる。その両党の共通点は反自民だ。特に長かった安倍政権を目の敵にしている。このため、仮に政権に就いて直ちに行い得る共通項は自公政権への報復だ。“モリカケ”蒸し返しはそのためだろう。

 かつて反自民非共産の枠組みだった民主党が2009年の政権交代となった衆院選で訴えたマニフェストには、国家構想があった。市民パワーで当選した国会議員100人が政府に入り、政府・与党一元化して政策を決定、官僚幹部人事も政治主導にする―などだ。

 当時は霞が関の官僚機構が標的にされ、議員が官僚を相手に財源を捻出しようとする「事業仕分け」も打ち出された。結果は成功とは言えないが、立民・共産など野党共闘よりは積極的な公約だったと言えよう。

編集委員 窪田 伸雄