合流組と残留組に分裂した後の「社会民主」
幹事長語る「立憲に違和感」、安保・天皇・国旗国歌の壁
社民党は立憲民主党との合流協議を経て合流組と残留組に分かれた。相手の立憲には、90年代政界改編期に旧社会党から旧民主党に移った勢力、社民党から乗り換えた議員らの流れがあり、名前を変えた旧社会党のような一面もある。
それでも立憲との合流を拒否した残留組の社民党は、福島瑞穂党首、服部良一幹事長を軸に政党要件の根拠が残る来年参院選までの勝負に懸ける。今の社民党にとって立憲はどう映ったのか。月刊「社会民主」3月号の特集「社民党の新生に向けて」は、服部幹事長インタビューの中に「立憲民主党への違和感」の小見出しを立てて扱った。
「社民党宣言」と「立憲民主党綱領」をじっくり比べたという服部氏は、「立憲民主党はやはり保守リベラル政党を目指していると言わざるを得ないのです。日米同盟を基軸とする考え方とか、どうしても隔たりがある」と指摘。自身の反基地運動の経験から「『日米安保条約を基軸に』とは言えない」と批判した。
また、「立憲民主の綱領には『象徴天皇制のもと』という表現があって、結党大会の檀上にも日の丸が掲げてある。象徴天皇制は憲法の規定にあるわけだが、米国の占領統治のために天皇が利用されてきた面もあるし、戦争責任もきちんと問われなかった。教育現場で『日の丸・君が代』が強制されているのも、やはりおかしいとも思うわけです」と述べている。
記事中、服部氏は日本に社会民主主義が必要として党存続の意義を強調するが、欧州の社会民主主義政党は国防も集団自衛権も国旗・国歌も否定しない。それを否定することが社会民主主義なのだろうか。多くの有権者に拒否されたのは根本主義的な反日思想だ。
しかし、このような考え方を抱えながら立憲に潜った者もいるだろうが、左派なりの矜持(きょうじ)を保ち残留してイデオロギー路線を純化し、風通しのよい党内環境になったようだ。巻頭には「『新しい人間』が社民党を変える」とのタイトルで、渡辺英明団体局長がM君という20代の青年党員の古い組織を活性化させている活躍ぶりを紹介し、再起を期している。
一方、選挙では立憲、共産などと野党共闘するわけだが、これほど「違和感」を持ちながらの選挙協力は埋没の歴史でもあった。小党ながら社民党の存続を懸けた戦いは、衆・参院選の注目点の一つとなろう。
編集委員 窪田 伸雄