イージス・アショア代替を模索

「公明新聞」ミサイル防衛、敵基地攻撃能力保有に慎重

 公明党の機関紙「公明新聞」は9月8日付に「日米同盟とミサイル防衛」と題して、同党外交安保調査会での元海上自衛隊自衛艦隊司令官・香田洋二氏の講演要旨を掲載した。政府が6月にミサイル防衛(MD)のためのイージス・アショア(地上配備型迎撃システム)配備を断念したことを受け、代替策をめぐる論議に向けたものだ。

 香田氏は「相手領域内で弾道ミサイルを阻止する能力は独立国としての固有の権利ではあるとは思う。しかし、それをもってイージス・アショアの代替案とするのは短絡的だ」と指摘。日米同盟の下で「そもそも敵基地攻撃能力は米軍の機能だ」と強調し、議論が成熟するまでは「米国の『矛』としての打撃力に依存することが大事だ」と述べた。

 また、同紙8月12日付には静岡県立大学特任教授・小川和久氏の同党外交安全保障調査会での講演要旨を掲載。小川氏は「イージス・アショアは、費用対効果についても優れている。本当は導入すべきだ」との見解を示しながらも、「日米同盟を重視した安全保障論議の中で、今回のイージス・アショア配備断念後を考える必要がある」との考えを語った。

 代替案として米海軍のイージス艦を有償で借りる方法、イージス・アショアのレーダーだけを配備して海上のイージス艦とつないで運用するなどのを提案を行っている。一方で、敵基地攻撃能力については「戦争の引き金」になる側面などを指摘した。

 同紙には、敵基地攻撃能力について山口那津男代表が8月6日の広島での記者会見で「慎重に議論しなければならない」と発言したことを載せており、自民党内の議論を牽制(けんせい)した形だ。

 ただ、MDは万能ではない。ロシアのプーチン大統領が国民向けに米国のMD網を突破する新兵器の開発をプレゼンしたように、ロシア、中国、北朝鮮のミサイル技術は向上していく。また、未来永劫(えいごう)に日米同盟が機能し、米国が本当に日本のため「矛」になってくれるのか。米国が同盟国に負担を増やす要求をする中で、敵基地攻撃論議は改めて国防の在り方を問うている。

 編集委員 窪田 伸雄