混乱続く英語4技能試験
2020年度実施の大学入試共通テストから導入される英語4技能(読む・聞く・書く・話す)の民間試験をめぐって、教育現場の混乱が収まらない。
文部科学省の10月の最終集計によると、英語民間試験を合否判定などに利用するのは大学全体の6割。東北大や北海道大や慶應など、4割は利用しないことになった。利用する大学の中には学部ごとに対応が異なっていたり、民間試験への大学側の対応は受験生から見ると複雑極まりない。その上、会場や日程も不明瞭では受験生や教育現場の不安が募るのは当然だろう。これらは英語民間試験の実施に関わる問題だが、そもそも目的が異なる民間の英語試験を大学入試に活用することに無理がある。
英語教育が進んでいる韓国では英語試験をめぐって、導入直前に頓挫した経緯がある。韓国では2008年から約5年間、約39億円を投じ、独自の国民英語能力試験(NEAT)を開発し、試験的な実施を経て、13年の入試から本格導入されることになっていた。ところが教育現場から「対策が間に合わない」といった反発や運用費用が掛かり過ぎるといった問題が噴出し、結局、朴槿恵政権で廃止された。
日本は英語教育で韓国、中国に後れを取っており、中高生の英語は「読む」「聞く」に比べ、「書く」「話す」が弱いと指摘されている。これを変えるために、英語4技能試験の導入となったわけだが、例えば韓国や日本で活用が広がるTOEIC試験で高得点を取ることと英語が使えることはイコールではない。また高校までの英語学習の成果を民間試験で測れるはずもない。結局、民間試験対策のために新たな犠牲を受験生に強いることになる。
韓国のNEATの失敗を教訓として、来年度の共通テストに合わせるよりも、4技能試験のあり方や評価方法など、もう少し時間をかけた検討を求めたい。
(光)