川崎の買い物難民


 10月から、市内の大型スーパーが全面出資し、念願の買い物バスが運行されることになった。と言っても、人口減の山間部の自治体の話ではない。2030年まで人口増が続く、政令指定都市の居住区(神奈川県川崎市)の話である。

 先日、区の外れにある地区の自治会長さんに呼ばれ、健康と終活の啓蒙(けいもう)活動に伺った際、そこで初めて買い物バスの話を聞いた。同じ区内でも駅からちょっと外れると、買い物難民問題が静かに進行していることに正直驚いた。

 実際に車で訪れてみると、狭くて急な坂道を上り切った高台の丘陵地帯に戸建て住宅や団地が広がっている。急坂を上り下りしながら日常を送っている、高齢者の悲鳴が聞こえてきそうなエリアである。

 8年前に自治会長を引き継いだというS氏は、高齢化率50%の団地の買い物難民対策のために地域の協議会を立ち上げた。移動販売の車を誘致し、買い物バスを6年がかりで運行にこぎつけた立役者である。

 途中、運営コストのめどが立たず、頓挫していたが、地元の大型スーパーが全面出資することになり、全国でも珍しい無料の買い物バスが実現した。1日7便と便数も多く、地域住民にとって利便性が高い生活の足となる。

 高齢化率が40%を超えると、自治会の運営はかなり厳しくなる。見守りも弱くなり、団地では死後1週間以上の孤独死も珍しくないという。

 筆者の知り合いには、自身の安否を知らせるために毎日ブログを書き続けている“お一人様”がいる。「ブログが止まったら、管理人さん、自治会長さんに知らせてくれ」と周囲に伝達しているという。

 高齢化が進むと、気付かなかったような生活課題が起きてくる。やはり「互助・共助」による自治会の役割は重要である。まず「自助」として、自治会に加入することから始めよう。

(光)