沖縄県内の小中学生、4人に1人が貧困状態

困窮による健康上のリスクを抱え、進学の可能性に影響も

 沖縄県内の小中学生とその保護者を対象とした貧困実態調査の結果がこのほど発表された。貧困率が前回調査から4・9ポイント改善し、25・0%となったが、全国平均の13・9%に比べると高く、4人に1人は貧困状態だ。経済的困窮によって健康上のリスクを抱え、かつ進学の可能性まで摘まれる状況にあるという実態が浮き彫りになった。(沖縄支局・豊田 剛)

3年ぶり小中生の実態調査、自由記述欄で深刻さ明るみに

 小中学生貧困実態調査は15年度から3年ぶり2回目。小学5年生、中学2年生の児童・生徒とその保護者、小学1年生の保護者を対象にアンケート調査を行った。継続して現状を確認し、施策の効果を検証して今後に生かすことが目的。今回は初めて大阪府と比較した。

沖縄県内の小中学生、4人に1人が貧困状態

児童・生徒の保護者を対象に行ったアンケート調査

 手取り収入などを世帯人数で調整した等価可処分所得が122万円以下のいわゆる「貧困」家庭は25%だった。

 経済的な理由で1年間に子供を医療機関に受診させられなかった割合は、小学5年生の保護者で大阪の5・8倍、中学2年生で同3・6倍という結果が出た。健康状態が「良い」と答えた割合も、困窮(貧困)層の子供で低くなる傾向が見られた。朝食を親と一緒に食べる割合も同様の結果が出た。

 困窮層の父親の職は「正規職員」が48・0%で、非困窮層より27・7ポイント低かった。母親の「パート・アルバイト」「働いていない」を合わせた割合は困窮層は60・6%で、非困窮層に比べ16・9ポイント高かった。

 経済的困窮は学習環境や進路にも大きく影響することも浮き彫りになった。「本や絵本が買えなかった」割合は、小中合わせて大阪より約2倍高く、経済的理由で習い事を断念している家庭も多いことが分かった。

沖縄県内の小中学生、4人に1人が貧困状態

朝食を家で食べない家庭が多いことから、名護市立屋部中学校では朝食を提供している

 今回のアンケート調査で注目すべきポイントの一つは自由記述欄だ。保護者から生活や進路に対する不安、行政への要望がつづられた。ひとり親世帯への優遇を疑問視する切実な意見があった。

 <子供の為に、夫婦で頑張っていますが、1人親世帯の待遇が良すぎて“離婚”を考えたこともあります。1人親だったら医療も学費も、修学旅行も制服も無料なんだろうなと思います。なぜ皆というか多子世帯の何かしらの援助がないのか不思議です。どうか助けて欲しいのに、なにも援助が受けられないのは今後不安です。助けてください。切実にそう思います。>

 こうした内容は自由記述欄といえども、非常に書きにくいことであり、深刻さが明るみに出たということだ。ひとり親家庭への経済的支援だけではなく、子だくさんな家庭に対する何らかの措置も考慮する必要が出てきそうだ。

沖縄県内の小中学生、4人に1人が貧困状態

小中学生調査報告書を公表した沖縄県子ども生活福祉部がある沖縄県庁

 調査結果について、沖縄県の玉城デニー知事は、「保護者の就労状況の不安定さが家庭生活に大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べ、「保護者や子供たちの声を真摯(しんし)に受け止め、心に寄り添い、全ての子供たちが夢や希望を持って成長していけるような、誰一人取り残されることのない社会の実現を目指す」と述べた。

 調査を受託した大阪府立大学の山野則子教授は、「就学援助制度の利用率も増加しており、対策の効果が出ていることがうかがえる」と分析。子供の居場所づくりなど、貧困対策を重点化する沖縄の姿勢を評価した上で、「親との関わりの少なさが、子供の生活習慣や学習習慣、自己効力感(適切な行動)などに影響を及ぼす」という見解を示した。

 沖縄大学の宮城能彦教授(地域社会学)は、「ひと昔前の沖縄には、家族の絆が強く助け合いの精神があった」と指摘した上で、貧困家庭が増えたのは個人主義の風潮と無関係ではないという考えを示した。

 県は今年度、高校生を対象とした調査を実施しており、来年度にも結果を公表する予定だ。