昭和天皇御製原稿を寄贈 元内舎人牧野氏、学習院大に
昭和天皇が晩年、御製(和歌)を推敲(すいこう)する際に書いたとみられる直筆の原稿を、保管していた男性が学習院大史料館(東京都豊島区)に4日に寄贈したことが分かった。文書の存在や内容については、世界日報が1月3日から4回にわたり詳報し、月刊誌「Hanada」6月号に論文を掲載している。
寄贈された原稿は、宮内庁罫紙29枚とメモ8枚などから成り、罫紙には約250首の御製が鉛筆で書かれ、約200首は未公開のもの。メモは掌(てのひら)に載るサイズのもので、約50首のお歌の素案、その時々の感慨や心に浮かんだことが記されている。
寄贈したのは元宮内庁侍従職で昭和天皇の身の回りをお世話する内舎人(うどねり)を務めた牧野名助さん(93)。昭和天皇の晩年に身の回りの物の整理をしている時に見つけ、大切なものと考え保管していた。
崩御まで約20年間、昭和天皇に仕えた牧野さんは、世界日報の取材に「最終的に学習院が保管してくれることになり、肩の荷が下り、ほっとしている。一方で寂しい気もする」と語った。
発見された御製には、最後の御臨席となった1988年8月の全国戦没者追悼式に寄せて詠まれた「あゝ悲し戰の後思ひつゝしきにいのりをさゝげたるなり」、岸信介元首相の死去を悼む「その上に深き思ひをこめていひしことばのこしてきみきえにけり(さりゆきぬ)」など3首も含まれていた。また実現されなかった沖縄訪問について、御製集『おほうなばら』で公表されたお歌の原型となる「思はざる病にかゝり沖縄のたびをやめけるくちおしきかな」などもある。
一方直筆メモには、お歌などがびっしりと記されており、昭和天皇の作歌への真剣な取り組みを物語る極めて貴重な資料だ。
学習院大史料館の担当者は「今後、調査研究を行う。その上で展覧会などを開くなど一般公開を検討している」と語った。