「つなぐ授業」でめきめき成果

「全国学力調査」で上位の秋田県大仙市

 文部科学省の「全国学力・学習状況調査」で毎年全国上位の成績を収めている秋田県。中でも大仙市は県内でも上位クラスで、市立西仙北中学校(佐藤心一校長、207名)は「学び合い 支え合い 高め合い」による「つなぐ授業」で成果を上げている。(市原幸彦)

机をコの字形に配置/高め合う意識を浸透

「つなぐ授業」でめきめき成果

大仙市立西仙北中学校3年A組の「自主公開研究会」数学授業=昨年11月14日(西仙北中学校提供)

 同校は県東南部の緑豊かな田園地帯に囲まれた丘陵上に位置する。周辺に塾も少なく、平日の家庭学習時間は県平均よりも少ないことが課題だった。

 佐藤校長は「学校の授業での解決と、家庭との連携で学習時間を増やすことが課題」とし、「つなぐ授業」や表現力の向上、小中連携などの諸改革に取り組んでいる。

 授業ではまず、机は互いの顔が見えるように全体を「コ」の字形に配置。佐藤校長は「子供同士をつないでいくためです。とくに義務教育の年代では、課題をいったん自分の中に取り込む作業が必要。友だちとの関わり合いの中で、自分のフィルターを通しながら解くことは教師の100遍の講義より有効ではないか」と語る。

 授業で課題が与えられると、1分もかからず机を並べ替え、4人で一つのグループをつくる。分からない人がそのグループの人に質問する。質問された人は、自分の分かる範囲で答える。「分からない人が主体性を持つようにするためで、教え合いではない」と佐藤校長。

 「子供たちは1人より4人でやると“これどうやるの”“ああそうか”と言いながら、だーっとやる。するといっせいに解けていく。質問した人は自分の問題点が解決に向かい、答えた人は、自分の考えをより確かめることになる。4人の中で解決できない場合は、他のグループに聞きにいく、とつないでいく」。

 「グループに課題を与えただけで終わる学校もありますが、当校では、あるグループの回答ができ上がると、4人グループのスタイルをやめてコの字形に戻し、自分で考えたことを皆の前で発表してもらう。ここまでが学び合いと捉えています」。

 もう一つのポイントは、皆で高め合うという意識を浸透させていることだ。「人を助けることが自分にも返ってくる。互いに学び合う気持ちさえあれば、学力差は生徒にとってはかえって良い刺激になる」

 そして継続的な力と、基礎・基本力をつけさせるため「1人勉強ノート」でバックアップしている。ここで家庭との連携が必要になってくる。一人勉強ノートは、宿題以外に、生徒がそれぞれ自分で学習内容を決め計画を立てて取り組む。

 内容は問わない。生徒が毎日取り組み、ノートを提出すること自体を評価したり、自分で課題を決めて実行することを評価する。今日の授業を家庭で振り返りながら、今日はこれだ!と思うことを見付けて学習したら、一人勉強ノートの取り組みも張り合いが出るという。

 学年ごとに最低限取り組むべき学習時間と分量を設定。1年生は80分、2年生は90分、3年生は100分だ。

 「部活もあるので2時間以上だとハードルが高い。現実的な目標を設定した」(佐藤校長)。規定の分量は、1年生がA4判で1ページ分、2年生はB5判で2ページ分、3年生はB5判で1ページ以上。

 ノートは毎朝、担任に提出する。1人勉強ノートも宿題も厳しくチェックし、アドバイスや励ましなどのコメントを書いて、放課後までに返却する。

 保護者も学校教育には協力的で、家庭学習の習慣を身に付けることに力を入れ、PTA総会や部活動などには積極的に参加。学校祭前は保護者の9割が除草に協力、トラックまで用意した。

 また7月、12月には「家庭学習強調週間」を実施。2週間分の学習計画を立てさせて、毎日、前日に取り組んだ内容と時間を記録させ、計画的に学びに向かう力を高めていくことを目指している。

 このような積み重ねの結果、定期考査で少なくとも6割は得点でき、最近ではもっと上がっているという。家庭学習時間も順調に増加している。特に、2年生後期の平均学習時間は、24年度7月で67・1分だったが、同12月調査では119・5分と大幅に増加。2時間以上学習する生徒の割合は、県平均とほぼ同じになった。

 昨年11月14日には自主公開研究会を行い、北海道、鳥取県など県内外から140人の教員のが視察訪問した。ある教員は「4人グループになってもおしゃべりもせず、真剣に取り組んでいる様子に感心した」と報告している。

 今後の課題として、佐藤校長は「活用力は身についている。基礎・基本力の上昇を授業改善の中で工夫していきたい」とし、さらに「どんなところに行っても、自分の意見が言え、問題解決し、自己実現できる子供たちに育ってほしい」と語っている。