戦略なき英語教科化


 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、教育制度の改革の動きが加速している。

 国際的な人材育成という観点から、文科省は入試制度に外部試験を活用することで、英語力の強化を打ち出した。TOEIC780点以上、英検準1級以上なら、センター試験英語は満点扱いとする特例案まで浮上している。

 小中高の学習指導用要領も全面改訂される方向だ。たとえば英語については、教科ではない「外国語活動」を小学校3、4年に前倒しで週1~2時間行う。5、6年では週3時間、英語の教科化を打ち出した。

 日本が国際競争で勝ち抜くために、高度な英語力を持ち、発信力ある人材の育成は待ったなし。高校、大学で習った英語が役に立たないのではどうしようもない。

 ただ、小学校段階で英語を教科として教える必要があるのか、専門家の間で依然議論は二分する。「成績評価が英語嫌いを招く」「国語力の低下につながる」との批判は根強い。

 最大の問題は、全国2万校ある小学校に数だけでなく、ネイティブな英語を話せて、英語指導ができる、質の高い教師をいかに養成するか。英語を教える体制が整わないままでは、見切り発車の感は否めない。

 英語支配を批判し、「日本語防衛論」を展開する筑波大学の津田幸男氏は、日本及び日本語を護るために国家としての言語戦略が必要と強く説いている。

 グローバル化=英語化ではない。英語一辺倒、英語至上主義では真のグローバル人材は育たない。平成28年度改訂の新学習指導要領では、日本人としてのアイデンティティーや誇りを持てるように、歴史、伝統文化、古典を含む国語教育を一層充実させることも併せて検討されている。

 母語である日本語が危ういなか、日本語を護るという観点を大切にしてほしい。

(光)