保護者と教師のバランス感覚重要
教育現場を生き抜くためのコミュニケーションスキル
臨床心理士の島崎美咲氏が講演
教員志望者のための人材育成講座「こんぺいとうゼミ」(NPO法人BOON主催)の講演会が、このほど都内で開かれた。「保護者との関係」、そして「自分の精神的健康を守っていくため」のコミュニケーションスキルをいかに向上させていくかについて、臨床心理士の島崎美咲さんが語った。
面会の場面を想定したロールプレーも
二つ目(一つ目は前回既報)「保護者との関係」を構築するには、という講座では、保護者の全体像①性格②精神的な病気③親子の関係性④訴えている問題――を見立てる。また、心配性なのか、認められたいのか、などが強く表に出ているのかどうか確認する。
保護者への対応は、一緒にとことん悩む、保護者の気持ちを受け入れてあげる、子供の未来・人生に口を出さない、ゴールを教師と保護者で共有、できる・できないを明確に話す。これらを踏まえた上で、保護者は児童・生徒のことを幼少時からよく知っている、いわば“子供のプロ”であることを認めながら、教師は“教育のプロ”という観点から学校生活、教育的観点から言うべきことを言う、バランス感覚が重要になってくる。講演の後、保護者役にBOONの内山葉月理事長、先生役に参加者の学生が交代でなり、面会場面を想定したロールプレーも行われた。
三つ目の講座として「対人関係療法の視点から自身の精神的健康を守っていくコミュニケーションスキル」をテーマに語った。
最近、教員の間で多く見られる「うつ病」について、努力や頑張りで解決できるものではなく、休養や精神科医の診察も必要だと指摘する。主な精神症状として「気分が落ち込む」「不安・焦り・イライラ感」「ぼんやりすることが増える」「飲酒量が増える」「集中できず、仕事でミスが増える」などのほか、人によっては「頭痛・耳鳴り・めまい」「食欲不振・過食」などの症状が強い人もいる。
うつ病の原因となる“悩み事”を調べると、対人関係の悩みを挙げる人が多い。対人関係の重要度として第1層:家族・恋人・親友、第2層:友達・親戚、第3層:クラスメート・職場の上司・同僚などとなっている。何かあったときに、情緒に最も大きな影響を与える人を「重要な他者」と位置付けている。
コミュニケーション上手になるには①できるだけ「言葉」で伝える②間接的な言葉は誤解のもと③勝手に納得しない④相手は分かっているはずだと思い込まない⑤言葉が難しい時は「文章」を第一歩として使う――などを紹介した。
島崎美咲さんは「人は独りでは生きていけない。本当に強い人は助けを求められる人。本当に困った時、誰かに相談してください」と語り、困難に出合った時に話ができる家族、恋人、親友との関係を日ごろから構築していくことを勧めた。