デジタルが変える学校教育の未来
東京書籍取締役 川瀬徹氏
教員を目指す学生・大学院生をはじめ、教育問題に関心のある人のための人材育成講座「こんぺいとうゼミ」(主催=NPO法人BOON・内山葉月理事長)がこのほど、都内で行われ、「デジタルが変える学校教育の未来」と題して講演会が開かれた。東京書籍取締役で教育文化局次長の川瀬徹氏は「最新のデジタル教科書・教材」に関して現状と課題を報告。参加した大学生ら30人余は講師の話に熱心に耳を傾けた。
紙の教科書超えた技術を添付/PDCAサイクルの実行を
デジタル教科書は教科書を超えた新しい技術も添付されるようになる。工場見学で360度パノラマ写真や中心に立って、タブレットを持って動かすと、画面や動画が角度を変えて見られる。東寺や法隆寺を立体的に見学できたりする。理科や社会で同時複数の動画を視聴でき、違いに着目させることもできる。問題はサイトを見て、「ワー凄(すご)い、こんなのも見られる」と感動が先行して頭の中に何も残らないということが起きる可能性がある。
特別支援教育への配慮として、文字を大きく表示したり、改行を自動調整したり、行間を広く開けたり、文字の背景の色を支援者が落ち着く配色に選択できたり、文章の読み上げ機能が付け加えられたり、さまざまな工夫が追加されてきている。
デジタル教科書に対する国の方針は、「内容を紙の教科書と同一とする」「紙の教科書の全てを取り上げる」「定価は可能な限り低廉に抑える」「改めて検定されなくてよい」「次期学習指導要領の実施に合わせて」「教科書特定図書等については一層の充実」「著作権の権利制限」など結構、難しいこともある。動画や音声で説明してあれば、文字での説明は余分になることも多い。
デジタル教科書とデジタル教材の関連付けについて、1人1台、学校と自宅で使えるOA機器またはクラウドを使った集中管理ができれば、配布した宿題のプリントを学校から家に持って帰るのを忘れた、とか、起こらなくなる。また、教科書会社では「学習要素リスト」を使い、デジタル教科書とデジタル教材の紐(ひも)付けを検討、学習上のどこで、つまずいているか、原点を確認できたり、似た他の問題で理解を深めることなど、できるようにしたい。
教育現場でも最近盛んに言われるPDCAサイクルとは、計画・実行・評価・改善(英語の頭文字)を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のこと。教科書においても、指導要領に基づいた教科書作成からの授業、学力検査を通じて、デジタル教科書とか問題データベースを使って再度、指導要領の理解・教科書のさらなる改善という児童・生徒の理解・思考を深めるためのPDCAサイクルを実行していかなければならない。