料理は生活の基本
今年夏に博報堂生活総合研究所が公表した調査によると、「夫も家事や育児を分担すべきだ」と答えた夫が8割を超え、30年前の約2倍になったという。
筆者は最近、料理を始めた。「夫も家事」という時代の流れに乗ったわけではない。理由は三つある。ある料理研究家を取材した時、人の生活の基本は、料理することだと教えられた。食べることが基本と考える人がいるが、そうではなく、食べ物がなければ生きていけないのだから、自分で作ることの方が大事だという。目から鱗(うろこ)だった。
もう一つは、健康診断で食生活を見直すように注意を受けたことだ。長い間、単身赴任を続けている筆者の食生活は、仕事の不規則性も手伝って乱れに乱れていた。朝食を抜いたり、深夜に食事したりは当たり前。それも外食がほとんど。栄養の偏りなんて考えもしない上に、味の濃い食べ物に慣らされていた。
最後の理由は、老後のことを考えて。今は妻が元気だが、今後どうなるか分からないので、今から料理の習慣を身に付けておこうと考えた。老後は、妻の手料理を楽しもうなんて、自分に都合の良いことを考えていてはバチが当たる。夫婦ともに長生きしたとしても、互いに料理を作ったり作ってもらったりする関係は楽しいではないか。
そんなこんなで始めた料理だが、野菜の切り方から魚のさばき方まで知らないことだらけ。勘を頼りに包丁を動かすのだが、これで無心になれるのか、料理は気分転換にはもってこいだと気付いた。朝食も作るから、朝は早起きになった。
これまで台所に立たなかった理由を考えると、父親の影響が強いのかもしれない。父親が料理する姿を見たことがないのである。筆者の兄と弟が料理を楽しんでいるという話は聞いたことがない。社会人になった長男が外食が多いのも、筆者の影響かもしれないと思い、それも反省させられた。(森)