学校で動物を飼う意味とは?

大田区立田園調布小学校校長・茂呂美恵子氏

 「動物飼育を通して生命を実感させ、情愛豊かな子供を育てたい」という趣旨で行われている全国学校飼育動物研究大会が第20回を迎えた。「学校で動物を飼うことの意味を改めて考える」と題して、このほど東京都文京区の東京大学弥生講堂で大会が行われた。東京都大田区立田園調布小学校校長の茂呂美恵子氏は、動物飼育推進校に指定されている、前任校の大田区立赤松小学校の実践活動について語った。

情愛から身に付く観察・表現力、飼い続けることで責任感育つ

学校で動物を飼う意味とは?

大田区立田園調布小学校校長・茂呂美恵子氏

 赤松小学校では5匹のモルモットを飼っている。獣医師の指導を受けながら、児童の昇降口にケージを設置、1・2年生が生活科の一環として、構内清掃時間に牧草を中心に、モルモットペレット、野菜を交ぜた餌を与えたり、水替え、ふんの始末などを行っている。週2回ケージ全体の清掃を行い、その時、体重測定、体調観察も実施し、飼育日記を付けている。

 児童たちは、飼育活動に参加していくうちに「かわいい」とか「生命の大切さ」に気付く。獣医師の指導も含め、仲間と話し合いながら、モルモットが心地良い抱き方、世話の仕方も分かってくる。一過性ではなく、連続性を持った飼育で責任感も育まれ、爪の様子、目や表皮、ふんの様子など日記に細かく書くようになり、鋭い観察、的確な表現力が身に付いていく。

 2年生の2学期には1年生への引き継ぎ、2年の2学期まで面倒を見るサイクルで飼育している。5・6年生の委員会活動で「触れ合いタイム」の活動を企画したり、動物飼育が他学年間の交流の場にもなっている。また、事情により保健室登校をする生徒なども、動物飼育に参加することで元気になったケースもある。

 昨年の2年生は、3匹のモルモットが死ぬという衝撃的な状況から飼育活動が始まった。児童たちは、自信喪失の中、事実を受け止め、モルモットにとって、より快適な環境とは何か、図鑑やインターネット、獣医師への聞き取りなど、調べたことを残りの2匹の飼育で実践し、これならできるという自信を持つようになった。

 2匹ではクラス全員で飼育活動に参加することが難しく、「元の5匹飼育に戻してほしい」と児童たちは考えた。その切なる思いを絵、写真、紙芝居にして校長室でプレゼンテーションした。その表現の豊かさ、奥深さ、力強さに圧倒され、東京都武蔵野市の井の頭自然文化園からモルモット3匹を譲渡してもらうことになった。

 誰かに言われてやるのではなく、自ら進んで学び、表現する学習が実り、飼育活動を通して身に付けたものが、他の教科の学習にもつながっている。

 動物を飼い続けることにおいて、保護者の協力は不可欠だ。長期休業中は、継続して飼育担当している児童が主体となるが、餌や望ましい環境について、これまでの学習成果を基にまとめたマニュアル作りをし、家庭でも安心して飼育できるよう配慮、保護者と学校の連携を深めた。

 持続的・安定的に学校における動物飼育を行うには、学校における教師・職員・家庭などによる価値の共有と組織的な対応が必要であり、獣医師との連携や自治体からの予算確保などの環境整備、小学校生活の中で一貫した動物飼育に対する位置付けなどをしっかりすることが重要だ。