学歴より学習歴の時代


 IT技術を教育に応用するさまざまな試みが始まっている。文部科学省が6月に発表した「Society5・0に向けた人材育成」では、スタディー・ログ等を蓄積した学びのポートフォリオの活用を取り上げている。

 どういうことかと言えば、ブロックチェーン技術(=分散型台帳技術)を使って、個人の学習履歴を蓄積し、一元管理する。例えば、学校で一つのカリキュラムを修了すると、それが元帳に蓄積される仕組み。人に教えたり、社会で身に付けたスキルや資格も、自分が学んだ学習成果がネット上のポートフォリオに蓄積されるというわけだ。

 教師が一人ひとりの習得状況を過去にさかのぼって把握できるので落ちこぼれが減り、教育の質が向上すると言われている。

 こうした試みは世界で始まっていて、オランダ政府は電子的管理システムによって、中等教育以降の国民の学習履歴を保管することを始めた。

 IT技術の教育への応用によって、学びのあり方がかなり変わる可能性がある。

 例えば、一流大学の講義をオンラインで視聴するネット配信サービスがもっと普及すれば、学ぶ意欲と時間さえあれば、誰でもいつでもどこでも、学校以外のネット環境で専門知識を習得することができる。お金がなくても学ぶ意欲があれば、学習が可能になるというのだ。

 しばしば経済力=学力・学歴といった教育格差が指摘されるが、その図式が当てはまらなくなるのではないか。つまり、学歴ではなく、学習歴が意味を持つ時代になるからだ。

 問題は、もっと知りたい、もっと学びたいという学ぶ意欲を持ち続ける人になれるかどうか。主体的に学ぶ人間をどう育成するか。これが最も難しいところかもしれない。

(光)