スマホから離れて夏休みを楽しもう

児童・思春期精神科医 森野百合子氏

 現代の生活にスマートフォンやパソコンのネット利用などICT端末は必要不可欠なものとなっている。一方で、過度な使用による依存症などの障害も多く報告されている。シンポジウム「スマホから離れて、夏休みを楽しもう」がこのほど、東京・本駒込の日本医師会会館大講堂で行われた。児童・思春期医療の立場からスマホやネット・ゲーム依存など健康を害する子供の現状について、東京都立小児総合医療センター児童・思春期精神科医長の森野百合子氏が語った。

生まれた時から身近な環境、ネット依存が犯罪に発展も

スマホから離れて夏休みを楽しもう

東京都立小児総合医療センター児童・思春期精神科医長の森野百合子氏

 不登校・引きこもりがあって、ゲーム依存になるケースと、その逆のケースもある。ゲームをやり過ぎると、イライラ状態が募り、暴力・暴言につながったり、家族関係が崩壊して、やむを得ず病院に来るケースもある。金銭目的で援助交際、やけになり自殺・自傷行為に陥る子供もいる。

 最近の環境を見ると、小学校入学前、生まれた時からゲーム、スマホ、パソコン、ネットが身近に有り、子供たちは使いこなしている。自分のアイデンティティー(自己の確立)がなされる前に、はっきりした意見を提示するテロリストのリクルートにはまってしまったり、不適切な内容のサイトに、のめり込んだりということもある。2017年(平成29年)10月31日に発覚した座間9死体遺棄事件なども犯人と被害者がツイッターでコンタクトを取っていた。

 最近では誘拐事件や、ストーカー事件があったり、子供たちだけで、外で安全に、思いっ切り遊べるという場所が少なくなっている。友達と遊ぶ時間も減って、公園のベンチで2人並んで遊んでいても、別々のゲームをやったり、昔とは随分違ってきている。

 一方で、“お受験”の競争も激化し、塾の終了時間が夜遅くなっている。親側のスマホ使用目的は安全確認、学校や塾からの連絡・応答が主なものになっている。ネットへのアクセス過多から、使用時間が守れない、依存的な行動、ギャンブル依存症、ゲーム依存症が入ってくる。人生の優先事項になって、ほかの事に興味が向かなくなってしまう。

 インターネットによる子供の心の問題として「使用時間が守られない」「いじめ」「“危ない大人”とのつながり・犯罪」「ネット通販による買い物トラブル」「アダルトな過激情報への安易な接触」「ネット中毒」「他人とのコミュニケーション欠如」「現実からの逃避・乖離(かいり)」「孤独感や憂鬱(ゆううつ)さの増加」などがある。

 バーチャルな遊びの世界では、間接的なコミュニケーションで、リスクは無く、死んだり失敗したりしても、簡単にリセットできる。勉強+ネット・ゲームよりも、リアルな体験・遊び・冒険の方が、子供の心、考える力を育てる。コンピューター、携帯電話、インターネットは便利な道具だが、それに生活を乗っ取られないよう注意することが必要だ。ネット依存は病気であるという認識が必要で、早期発見、早期治療のため、病院に行くことを勧める。