本当に大丈夫? その生活習慣
埼玉セントラル病院 丸山直記院長
食事・運動・睡眠でバランス良く
東京都健康長寿医療センターの主催で「ストップ!その生活習慣は本当に大丈夫?」と題して第150回老年学・老年医学公開講座がこのほど、練馬文化センターで行われた。埼玉セントラル病院の丸山直記院長は「高齢者と生活習慣病」について、一時的には効果があるものの、長期に続けると健康障害をもたらす生活習慣もあると語った。
若いうちからの対策が必要
高齢者の定義について東京都健康長寿医療センターの研究・報告で、10~20年前と比べ加齢による心身・心理的機能の変化が5~10年ほど遅れていることから、65歳から74歳を準高齢者、75歳から89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者と定義し直すことを提案している。
生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などが発症・進行に関与する糖尿病、肥満症、高脂血症、高血圧などの疾病群のこと。これらに共通することは血管に傷を与えてしまうこと。高血糖の状態が続くと、糖尿病性腎症という慢性腎不全になり、人工透析が命綱になってしまう。また、体内のたんぱく質が変化して糖毒性が出現し、微小血管を傷つけ、もろくなり、詰まりやすくなる。
若年層での生活習慣病の発症は傷が広がらないうちに、しっかり治療することが大切。高齢になれば、若い人ほど傷の治療は簡単ではなくなるが、これ以上傷まないように血管を大事にしなければならない。
病院で高血圧と診断されると、降圧剤が処方される。しかし、薬で一気に血圧を下げ過ぎると、各臓器に十分な血液が送られにくくなることがあり、脳梗塞や心筋梗塞のリスク・ファクターとなる場合もある。一時的に血圧が高くなることはよくあることで、安静にしていれば、落ち着く。喫煙においても、長期に吸い続けると、気管支が細くなり、炎症を起こし、酸素の取り込み、二酸化炭素の排出機能が低下、慢性閉塞性肺疾患を起こす。予防のためには、禁煙が最も大事であることを忘れてはならない。
テレビや雑誌で「○○健康法」「○○ダイエット」といった特集が組まれることがある。単純に信じた人が偏った食生活や生活習慣をしてしまうことがある。一時的には効果があっても長期間続けると害になることもある。ポリフェノールが体に良いと言われて、赤ワインを多量に摂取すると、アルコールによる弊害も出てくる。大豆イソフラボンでダイエットと言われ、普通の食生活にプラスして納豆・豆腐を多量に摂取してもダイエット効果としては半減したり、太ったりということが起きる。単純に信じるのではなく、科学的な根拠に基づいた、食生活や運動、睡眠をバランス良く考えた健康法を実践していただきたい。
日本人の平均寿命は男性が80・98歳、女性87・14歳。寝たきり、介護が必要になる前の健康寿命は男性72・14歳、女性74・79歳。調査方法によって、誤差があるものの、栄養管理や運動習慣を持つことによって、生活習慣病を克服して、健康寿命を引き上げ、平均寿命との差をできるだけ縮めたい。ただ単純に健康だ、というのではなく、高齢者が自宅に引きこもらず、積極的にボランティアなど社会参加ができ、自己承認による満足感が持てる社会が求められている。