「ストレスをためない生き方」と題して講演

北里大学大学院医療系研究科教授の田中克俊氏

 強烈なストレス社会と言われて久しい日本人の働き方を食事、運動、睡眠で跳ね返そうと、ストレス科学シンポジウム(主催・公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター)うつにならない第8弾として「毎日を楽しく過ごすための工夫」が、このほど、早稲田大学小野記念講堂で行われた。北里大学大学院医療系研究科教授の田中克俊氏は「ストレスをためない生き方」と題して講演し、「うつになると、睡眠時間が短くなる」と語り、いかにして良質な睡眠を得ていくかについて語った。

脳と体を休める良質な睡眠 寝る前の環境づくりが大事

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北里大学大学院医療系研究科教授の田中克俊氏

 人間は生き物として、寝る、食べるがしっかりしていないと、生きていけないことは明らかで、神経系、免疫系、内分泌系がうまく働くためには睡眠が非常に重要な働きをしている。

 必要な睡眠時間は厚生労働省の指針としては7~8時間とされている。だが、年齢や個人によって差が大きい。眠気が強くてどうしようもない、とか、仕事が忙しくて、4、5時間しか寝ていないという場合もある。休日は普段より2、3時間長く眠ることで、睡眠負債を解消することもできる。

 睡眠には、体を休め、夢を見たり、記憶の整理をする比較的浅いレム睡眠と、脳と体を休ませ、大脳皮質のメンテナンス、成長ホルモンの分泌や免疫関連物質の分泌を促す、比較的深いノンレム睡眠がある。睡眠の最初、2~3時間の深いノンレム睡眠を得ることが良質な睡眠へと誘うことになる。

 うつ病になってから、睡眠障害が発生するというよりも、睡眠障害が発生してからうつ病になるケースが多い。また、うつ病の症状がだらだらと、長引く要因の一つとして、不眠の症状が続くケースも多い。未病対策として、良質な睡眠を取ることが重要なポイントとなってくる。

 睡眠には、疲れて、目覚めていた時間の長さや、活動による睡眠物質の蓄積によって睡眠圧が高まる仕組みと、活動モードを高める交感神経、休息モードを引き出す副交感神経の交差を体内時計が作り出している。また、体内の睡眠ホルモン(メラトニン)が朝、太陽を浴びて蓄積され、夜暗くなると、全身に分泌され、眠気を誘う。

 夜間の明るい照明や寝る前のパソコンやスマートフォン使用は避けたい。心配事は寝床に持ち込まないように、夕方以降はカフェインなど飲食物を取らないなど、睡眠を阻害する刺激は避けて、寝室はできるだけ暗く、静かで室温は適度に、寝る前の環境を整えることも大事なこと。

 体内時計の周期はちょうど24時間というわけではなく、放っておくと、徐々に遅れていく。体内時計をリセットするためには、毎日、朝日を浴びて目覚め、睡眠に入る2~3時間前にリラックスする軽度の運動で睡眠圧を高め、良質の睡眠に導く。