児童虐待と関係機関の連携


 先日、児童虐待に関するシンポジウムに参加した。テーマは児童虐待への刑事的介入と関係機関の連携だ。警察と児童相談所(児相)をはじめ関係機関が連携を強める必要があると言われることが多いが、それには難しい課題がある。

 虐待事件解決のために犯罪捜査を行う警察は、関係機関に情報提供を求めることはあっても、虐待者を逮捕したこと以外の情報を公表できない。他機関からすると、情報を提供して協力しても、その後に虐待者の状況などが分からないことになる。

 そのため児相からは被害児童の保護のために情報提供のルール提示を求める声や、児相に通告する際に警察から保護者へ説明してほしいとの声があるという(ただ、虐待予防では連携が行われている)。

 報告では、捜査の枠組みを見える化し、「子供のため」に他機関と連携して、情報共有を推進することが提案されていた。

 もう一つ印象的だったのは、高松高等検察庁で始まった「高松方式」と呼ばれる取り組みである。

 過去の虐待事件では、中央省庁の縦割りの弊害がそのまま地方に持ち込まれたことや、児童相談所が子供の保護から親の指導まで抱えるなどの背景があった。そうしたことを踏まえて、高松方式では「CHILD FIRST」、つまり子供の幸せを第一として、家族関係の再構築、親の監督・指導に取り組む。そして検察でも関係機関との連携を進めている。

 今後の課題としては、子供に優しい社会の再構築や妊娠期からの切れ目のない支援と子育て家庭へのアウトリーチなどが挙がっていた。

 また、いずれの報告でも、従来の警察や検察の姿勢からのパラダイムシフトを強調していた。子供の幸せのために垣根を払って話し合う。児童虐待がそれほど深刻ということでもある。(誠)