体罰や暴言が子供の脳に悪影響

「躾で容認」6割近くに、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン調査

 子供の躾(しつけ)の一環で体罰を容認する人が6割近くいることが、このほど、子供の支援を専門とする「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の調査で分かった。たたいたり、怒鳴ったりすることも子供の成長に悪影響を及ぼす恐れがあるが、調査対象の6割近くと容認派の比率が高いことが分かった。調査担当者は「虐待や学校での体罰は禁止されていても、家庭を含むあらゆる場面では禁止されていない」と指摘。民法が認める「親権者による懲戒権」の削除などを提言している。

「たたく」「怒鳴る」も高い割合で肯定

 調査は、子供の支援を専門とする「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が昨年7月にインターネットで実施。成人男女2万人から回答を得た。

 躾のための体罰を「積極的にすべきだ」は1・2%だが、「必要に応じて」「他に手段がない時」を合わせると57%が容認。たたく行為は60%が肯定し、体罰否定派でも4割が尻や手の甲をたたくことは容認した。「怒鳴りつける」は6割近く、「にらみつける」は半数近くがそれぞれ容認していた。

 子育て中の1030人の親に尋ねた実態調査では、7割が躾の一環で子をたたいた経験があると回答。8割は子供の言動にいらいらしたことがあるとし、6割は育児と仕事などの両立が難しいと感じたことがあったと答えた。

 厳しい体罰を受けた子供の脳は、感情や理性に関わる右前頭前野の一部の容積がそうでない子供と比べ19・2%、認知に関わる左前頭前野の一部の容積が14・5%萎縮すること、言葉による暴言虐待では脳の聴覚野の一部が肥大化することが分かってきた。さらに身体的暴力よりも怒声や暴言など心理的暴力の方がよりダメージが大きいという。

 ところが、「体罰は時と場合によって必要で教育効果がある」などと、日本は体罰を容認する意識、社会風潮があるのも事実。特に家庭での体罰は見過ごされやすい。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは長年、児童虐待防止の活動に取り組んでいる。

 体罰は学校教育法11条でも禁止しており、DV防止法、高齢者虐待防止法等でも禁止されている。しかし、今年3月、福井県池田町の中2男子生徒が教師による厳しい指導や叱責が原因で飛び降り自殺するなど、体罰等による指導死はなくならない。

 厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」データ(約2万9000人分)を使った追跡研究によると、3歳半の時にお尻をたたくなどの体罰を受けた子供は、まったく受けなかった子供に比べ、5歳半の時に「落ち着いて話を聞けない」という行動リスクが約1・6倍、「約束を守れない」は約1・5倍になるなど、さまざまな行動リスクが高いことが分かった。また、MRI画像で虐待児の脳を検査すると脳の発達に負の影響が大きく「体罰は百害あって一利なし」と言われている。

 厚生労働省によると、厳しい体罰で感情などをつかさどる脳の前頭前野の容積が2割近く萎縮し、言葉の暴力で聴覚野が変形するとの研究もある。同省は、いらいらしたら深呼吸するなど「愛の鞭(むち)ゼロ作戦」を呼び掛けている。