ビタミンDで骨粗鬆症を予防

桜美林大学老年学総合研究所長 鈴木隆雄氏

ビタミンDで骨粗鬆症を予防

桜美林大学老年学総合研究所長 鈴木隆雄氏

 老年学・老年医学公開講座(主催・東京都健康長寿医療センター)が、東京都北区王子の北とぴあ さくらホールでこのほど開かれた。身体に必要不可欠なビタミンと健康長寿との結び付きについて「ビタミンDで転倒予防」と題して桜美林大学老年学総合研究所長(大学院教授)の鈴木隆雄氏が語った。

筋肉保持で転倒防止も

 ビタミンは体の中でさまざまな働きをし、摂取しないと、体に変調を来し、最悪の場合、死に至ることもある。ビタミンDについて、まったく、摂取しないと、脊柱側弯症、肋骨の突出変形、下肢の変形、歩行障害を引き起こす「クル病」(18世紀後半、煤煙〈ばいえん〉で日照不足の英国で多数症例)になってしまう。戦後の一時期、日照時間の少なかった東北地方を除いて、日本では、体内合成のため必要な日光が十分あり、栄養摂取(シイタケやサケなど)も十分であったことから、歴史上、ほとんど見られなかった。

ビタミンDで骨粗鬆症を予防

ビタミンDの摂取(講演録から)

 ところが、最近、高齢者や若年女性の調査で、9084人中、充足率30ng/mlに達している人は9%と、ビタミンDの不足状態だという調査結果が明らかになってきた。ビタミンD生成に必要な日照は強い真夏で5~6分、弱い12月でも20分の日光浴で十分足りる、とされている。多量に紫外線を受けることは皮膚に悪影響を与えるが、日焼け止めなど、行き過ぎた紫外線カット(最も遮断率の高い物で95%)によって、ほとんど日光・紫外線を受けないこともビタミンD生成上、大きな阻害要因となる。

 ビタミンD不足は筋肉の減少や骨粗鬆(そしょう)症を招き、転倒した場合、骨折に至るケースも増えてくる。女性の場合、妊娠出産でビタミンD不足が胎児に影響を与え子供のクル病の懸念も増えてきている。

 筋肉量の維持にも、ビタミンDが影響することが分かってきた。50、60、70と年齢が高くなるにつれ、筋肉がへたってくる原因の一つにビタミンD不足があると言われる。その状態をサルコペニア(筋肉減少)という。全身の筋肉が減り、バランスを取る筋肉など転倒防止の体力・瞬発力が落ちてくる。ビタミンDが不足すると転倒する確率が高まることも追跡調査で判明した。筋肉量が減ると、物を噛(か)む、飲み込む、下腹部筋の弛緩(しかん)で失禁など日常生活に不都合が多くなるので注意が必要だ。