「母親であることを喜べるように」


 トランプ米大統領に先立って来日した長女のイバンカ大統領補佐官が、都内で開催された国際女性会議で基調講演を行った(本紙今月4日付)。会議は政府の女性活躍推進政策の一環として開催されたものだが、イバンカさんは女性の起業や経済分野への積極参加を訴える一方、「(子を持つ母親として)私も仕事と家庭のバランスを取ろうと、もがいている」「そろそろ社会は、女性が昇進の遅れを心配せず、母親であることを喜べるような、新しい革新的な方法を見つける時だ」と強調していて、印象的だった。

 イバンカさんの言葉で思い出したのが、アメリカで数年前、20代から30代の高学歴の女性たちの間に「主婦回帰」が広がったという話だ(『ハウスワイフ2・0』文藝春秋刊)。

 彼女たちは、自身の母親の世代が家事を捨て企業社会で燃え尽きた姿を見て、自分の人生として子育てや家族との時間を選んだという。自らを「家庭を作る人(ホームメーカー)」と名乗り、ブログなどで「すてきな家庭生活」を発信する。そして手作りの品物を販売するなど起業家としても活動する。それが彼女たちにとって、積極的で意義ある人生というわけだ。彼女たちの生き方はアメリカで論争を巻き起こしたという。

 日本でも専業主婦を希望する女性は一定数いる。「3歳までは家庭で育てたい」と、仕事の継続より子育てを優先する母親も多い。筆者の妻もその思いが強かった。もちろん一方で、女性の労働力の必要性が強調され、働きたいという女性も増えている。

 真に女性が輝く社会を目指すためには、仕事への復帰がしやすい仕組みはもちろん、例えば現在議論になっている保育園無償化だけでなく、在宅育児を選択した家庭にも一定の支援をすべきではないか。そうした政策転換によって女性の選択の幅も広がるはずだ。(誠)