人間関係を育てる部活


 全国高等学校野球選手権大会や、さまざまな競技で全国一を目指す全国高等学校総合体育大会が終わった。大逆転で全国1位を獲得し、歓喜の涙を流す生徒、苦労が報われず、地方大会で敗れ、涙をのんだ生徒たち。若い、その時期でしか感じることができない、それぞれのレベルでのアツいドラマが展開された。

 その陰で児童・生徒の虐待の場となっている「ブラック部活」が社会問題化している。生徒に後遺症が残るほどの怪我(けが)をさせたサッカー部の監督、バスケットボール部でハーレムを形成するセクハラ顧問、難聴になるほど練習させる吹奏楽部の顧問、練習のやり過ぎで、肩や肘を痛める野球部の生徒、数え上げれば切りがない。

 そもそも、部活は基本的に「自主的」に参加するもの。部活がすべて、悪いというのではない。自分の好きな活動で学校に行く意義を見つけたり、居場所を確認できたり、顧問、監督、コーチなどへの礼儀を教えられたり、全力を尽くした大会での結果に同僚と仲間意識や人間関係が育ったり、良き面も多々ある。

 顧問や監督による暴力や暴言、理不尽な指導、先輩に対する絶対的服従の風習など、度が過ぎれば問題だが、社会に出て役に立つことも、多く経験できる。

 何のための決まり、なのか、疑問に感じることでも「先輩の言うことならば…」と理不尽に耐えた経験が世に言う「ブラック企業でも働ける土台」を築いている、と穿(うが)った見方をする人もいる。

 子供たちの自主性や人間力を育てる上で、年々、部活の重要さが増している。基本の確認、技能の習熟など、ホッタラカシでは育たない。一生懸命になる顧問や監督が居なければ身に付くものではない。要は匙(さじ)加減の問題だろう。現場の教師たちの模索は続く。

(宏)