水辺の生き物、楽しく育てよう
葛西臨海水族園で教諭たちの講習会
4月になると、ピカピカの1年生が通学し始める。また、進級でクラス替えがあったり、学校に躍動感がみなぎる季節になる。教室で初めて飼育する子供たちが失敗しない飼育や、飼育のための基礎知識と方法を学ぶ、小学校の教諭を対象にした講習会が東京都江戸川区臨海町の「葛西臨海水族園」で開かれた。(太田和宏)
観察・飼育の注意ポイント学ぶ
童心に帰ってワクワク、ドキドキ
飼育する際の心構えとして、最初から完璧を目指すと、途中で息切れするので、肩の力を抜いて、楽しさや面白さを伝え、最後まで飼い続けることを伝えることがポイント。また、ブラックバス、アズマヒキガエルなどの外来種についても、飼えなくなって、公園の池や川に放すと、日本固有生物の生態系を壊してしまうことにも理解を深めておく必要がある。
飼育ケースについて、素材は掃除のしやすさ、傷が付きにくいことなどを考慮してプラスチック製かアクリル製、水を入れた時点での重さも考え、30㌢くらいのもの、仕切りで分槽できるもの。
水温は15~30℃くらいで、冬眠をさせないように。水草を繁茂させるため、日当たりの良い場所に設置する。酸素の補給のためのエアレーション、水質保持のための濾過(ろか)装置、餌は与え過ぎると、水質汚濁の原因になるため、数分で食べ残しが無くなる程度に。水換えは半分くらいを目安に汲(く)み置きした水道水を使う――など細かな指導だ。
カエル、カメ、アメリカザリガニ、トンボの幼虫ヤゴの4コーナーに6人ずつの観察会が行われた。男性教員たちは、子供の頃を思い出してか、目がキラキラ、手持ちのスマホやタブレット端末で写真撮影会に。
カエルの説明を担当した教育普及係の天野未知さんは「飼育容器は壁を伝って外に出るので、ふたが必要。アズマヒキガエルは前足の指4本、後ろ足5本、生きた動く餌しか食べない、毒を出すので、目に入らないように」など、注意すべき点を説明。動物との触れ合いをしようとしたところ、女性教諭が、ノソノソ動くカエルを見て、「カエルで、いたずらされ、気絶したことがある。トラウマになって、無理です」と後ずさりするハプニングも。他の女性教諭からは「よく見るとかわいいですね」という声も聞かれた。
教育普及係の西村大樹さんはカメの飼育を説明「当初は20×30㌢くらいのプラスチックケースで十分だが、数年たつと、衣装ケースクラスが必要に。水の入れ替えは温度を一定にしていれば、水道水のままでも可。餌は専用の乾燥餌、だが、与えた分だけ、食べてしまうので、注意が必要」と説明。カメの前足、後ろ足がブヨブヨの“メタボ”状態になってしまう。カメはサルモネラ菌を持っているので、触った後、手洗いを十分にする必要がある。
アメリカザリガニは教育普及係の太田智優さんが担当に。「とにかく、繁殖力がすごい。池や水田、河川の下流など水質悪化に強く、小魚やエビ、魚用の餌、カメ用の餌、水草など、何でも食べ、餌が無ければ“共食い”する。飼育容器は個体ごとに分けた方がよい。脱皮する時に必要なので、石を入れておく必要がある。寿命は5年だが、3年で大人に、要注意外来生物である上に、目を離すと、容器の隙間から脱出する」こともあると言う。
教育普及係の雨宮健太郎さんはヤゴの飼い方のポイントについて「水質の管理と羽化のための足場確保、生きた餌しか食べないので、餌作りに手間がかかる。プリンのケースくらいの小型容器がベスト。塩素を抜いた水をこまめに入れ換える必要がある。小さいヤゴの餌はミジンコなどだが、成長してくると、イトミミズ、アカムシ、ボウフラなどとなってくる。餌のイトミミズを飼うのが難しく、団子になって、内側や下側の個体が死ぬことが多い、なるべく小分けに。涼しい日陰に置いて、こまめに水を替えること」と餌の確保が難しいことを紹介した。
「学校で生き物を飼うということ」について、「生き物を飼う楽しさを知ってもらいたい、不思議さや面白さに気付き、たくさん観察してほしい、興味・関心を持って、自然環境にも目を向けてほしい」と西村さんが講習の意義を語った。