不登校を長期化させない
先月、フリースクールや家庭など学校以外の場での学びを支援する「教育機会確保法案」が衆議院文部科学委員会で可決された。文部科学省の速報値では、不登校児童生徒の数は3年連続増の12万6千人。全児童生徒数に占める割合は、1991年以来最も高くなった。90日以上の長期欠席が6割近くというから、問題は深刻だ。
法案は、約7万人に上る長期不登校児童生徒にも教育の機会を確保しようというもの。「不登校を助長する」と慎重論が強かった、フリースクールなどを義務教育に位置づける文言は削除された。賛否はあるが、フリースクール運営者は「一歩前進」と受け止めているようだ。
不登校の要因は文科省の調査によれば、「不安」「無気力」傾向を挙げており、背景に「家庭に係る状況」が影響しているという。親が仕事で忙しくて、なかなか子供のSOSに気付かなかったり、規則正しい生活習慣ができていない子も多い。
1年前、不登校児の教育支援を行っている開善塾教育相談研究所の金澤純三氏に話を聞いたことがある。毎朝決まった時間に起きて、朝食を食べるといった、ごく普通の生活習慣が身に付いていない子が多いという。人間の行動は意思より、習慣性の原理で決まると言われている。開善塾の合宿では規則正しい生活を体験させることで、学校復帰につなげていた。
登校させれば問題が解決するというわけではないが、不登校が長引けばひきこもりとなり、最悪自殺に至る。金澤氏によると、「不登校はさまざまな社会の問題の始発駅」となる。子供の本音は学校に行きたいのに、何らかの理由で行けないのである。子供の心の葛藤を受け止め、行けない理由を理解し、ときには教師が家庭の事情に入り込むことも必要だろう。
教師と親、民間の関係機関が連携して、早期に学校に戻れるよう忍耐強い取り組みが最悪の事態を防ぐことになる。(光)