男性保育士の難題


 待機児童が2年連続で増えている。受け入れ定員は拡大したが、利用希望者がそれより増えているからだ。そんな中で、保育園の新設計画が頓挫するケースが相次いでいる。

 その主な要因は周辺住民の反対で、その理由に驚かされる。①子供の声がうるさい②資産価値が落ちる③道が狭くて危険などだ。「子供は社会の宝」は過去のものになったのか。

 神奈川県内の保育園経営者から、次のような話を聞いた。園児の声がうるさいという住民の苦情はないが、日ごろから住民と交流し、トラブルが起きないように気を遣っている。たとえば、夏になると、園児たちが外で水遊びをするので、普段よりもはしゃぎ声が出る。その時は前もって、地域にあいさつ回りをし、理解を得るようにしているという。

 待機児童を減らす上での課題は、もう一つある。保育士の不足だ。ネックとなっているのは賃金の低さ。幼児教育という大切な仕事にもかかわらず、平均給与が22万円弱(平均年齢35歳)。「それでも長く働いてくれる保育士は、子供が本当に好きで、使命感を持っています」と前出の経営者は語る。

 最近、よく耳にする男性保育士は増えていないのか。「男性を雇うことも考えているのですが、難しい問題があるのです」。敬遠する保護者が少なくないのだという。年長者になると、男性保育士は、遊ぶ時などに一定の役割が期待できるが、乳児になると、オムツの取り替えがあるので、女の子の場合、保護者に嫌がられるという。

 2010年の国勢調査によると、保育士の中で男性が占める割合は2・5%。5年前の0・8%より増えてはいるが、まだまだ少ない。「やはり女性の役割はあるのです」と経営者。男性保育士に対する保護者の抵抗感は、ジェンダー論からすれば「偏見」ということになるのだろうが、それが通用しない分野が存在するのである。(森)