入社式も親同伴
入学式シーズンになると、小学校の入学式の日、校門前で着物姿の母親と記念撮影したこと思い出す。入学・卒業式をはじめ、大学までに親と一緒に撮影した写真はそれ一枚きりで、今もそれを大切にしている。
中学の入学式に、親が出席したかどうか、記憶は曖昧だ。しかし、高校からは、どんな行事にも、親が出席しなかったことははっきり覚えている。
当時、高校生ともなれば、学校の行事に親が来ることは、子供が恥ずかしがって止めたし、親も「参加する」とは言わなかった。農家が多い地方だったので、入学式シーズは農繁期と重なり忙しい。どの家庭も、子供のために時間を割く余裕はなかったのだ。
今は大学院に通う長男が大学受験の時、試験会場に親同伴でやってきた受験生がいたことに驚いていた。しかし、今や、大学の入学式ばかりか、親同伴の入社式もめずらしくない。
中には、式次第に「保護者代表の挨拶」を入れる会社もあるとか。会社の前で、着飾った母親と一緒に記念撮影するかどうかは知らないが、親も親なら子も子、そして会社も会社である。
お彼岸に、墓参りのため里帰りした。その時、小学4年の男子を持つ姪がこう語って嘆いた。息子が入っている少年野球チームの試合に応援に行かないと、周囲からクレームが入るので、どんなに忙しくても、試合に同伴しないわけにはいかないのだ、と。
子供の数が少なくなると、親は野球の応援はもとより、入社式まで見届けたいと願うようになるのかもしれない。また、手軽に写真が撮れるデジカメが普及し、家族写真が溢れる時代と、自分の子供の頃と比較すると、隔世の感がする。
大学の入学式に向かう親子連れを見ると、「今の若者は…」と口走りたくなるが、彼らは子供の時から何でも親同伴で育っていることを思い、グッと我慢する。(森)