宇宙教育の可能性


 このところ、宇宙に関する話題が続いている。宇宙飛行士の大西卓哉さんが2016年6月ごろから約半年間、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在することが先頃決まった。そのISSには現在、若田光一さんが滞在し、来年5月までの2カ月間は日本人として初めて船長を務める。

 一方、「世紀の大彗星」と言われたアイソン彗星は、太陽に接近した際に崩壊したと見られるが、この大彗星見たさに望遠鏡を購入した人も少なくないだろう。それだけ宇宙の神秘は私たちの好奇心を刺激し、わくわくさせる力がある。

 地球上では現在、人口増大にともなう食糧・エネルギー不足や自然破壊など難題山積。加えて、わが国では間違いなく起きる大規模災害、すでにはじまっている少子高齢化などが重なり、国民一人ひとりが相当の覚悟と犠牲精神で対処しなければ、今世紀を乗り切るのは難しいだろう。

 そこで必要となっているのが私たちのパラダイム(思考の枠組み)転換だが、古い価値観や常識に縛られた大人にはこれがなかなか難しい。そこで希望は子供たちで、「宇宙教育」には彼らの視野を広げる役割が期待される。

 宇宙の神秘な世界は、子供の好奇心を駆り立てて、夢を膨らまし、大人では思いつかないような発想を引き出すことがある。大人のパラダイム転換は難しいと指摘したが、宇宙体験にはその大人の価値観さえ大きく変える力を持つ。アポロの乗組員の中には、地球に帰還後、伝道師になった人もいる。宇宙体験後、人生観を大きく変えた宇宙飛行士は少なくない。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)には、宇宙を題材にしたさまざまな教育プログラムを実践する「宇宙教育センター」がある。子供たちにダイナミックな刺激を与える上で、宇宙の神秘に勝る教材はない。その活動をもっと後押しする施策があっていい。(森)