地域で子育て応援
毎年1月末、全国自治体の家庭教育支援の事例報告会「全国家庭教育支援研究協議会」が開かれる。今年は地域総がかりで子育ち・子育てを応援する東京・青梅市のNPO法人「青梅こども未来」など、ボランティアの力を活用した取り組みが印象的だった。
担当者の共通の課題は、本当に支援を必要とする人をどうつなげるかということ。例えばシングルマザーは仕事に忙しく生活に余裕がない上に、支援制度があっても情報が届きにくい。
筆者が注目したのは新年度から始まる訪問型支援の取り組み。先行的に全戸訪問に取り組み始めた和歌山県湯浅町の事例報告は、児童虐待予防の意味でも示唆深いものだった。
子育て情報誌『すまいる』を配布しながら、子供がいるすべての家庭を訪問し、気になる家庭を見守り、必要に応じて行政につなげる。訪問者が保護者や家族と直接交流し事情を共有することで、養育相談も増え、不登校や虐待も減ったという。湯浅町は人口1万3千人、小さな自治体だからこその取り組みと言える。
年が明けて、子供や高齢者の虐待事件が相次いでいる。先月には5歳男児放置虐待死事件が起きた厚木市で、再び7歳と5歳の姉弟がうつの母親によって絞殺される事件が起こった。事件のたびに行政の不手際が指摘されるが、今の財政事情では限界がある。
考えてみれば、筆者が小学校の頃は家庭訪問があった。いつの頃からか、家庭訪問がなくなった。前述の「青梅こども未来」は地域ボランティア300人を動員し、多様な世代が子育て家庭を見守っている。
川崎市多摩川河川敷中1男子殺傷事件から1年。行政だけでは難しいことも、地域と連携すればできることが増える。都市住民には健康で時間も経済もある団塊世代が力を持て余している。次世代のために団塊ボランティアの力でできる支援は多い。(光)