常に勉強する教師を目指せ

北海道師範塾が心構えを伝授

 教師の質の低下が叫ばれて久しい。教育現場を見れば不登校やいじめは後を絶たず、今なお大きな社会問題になっているが、その根底に、教師の指導力不足があることは否めない。そうした中で北海道師範塾「教師の道」(吉田洋一塾頭)では、教師を目指す学生などを対象に教師養成講座を開設。教師になるための心得や児童生徒への指導方法を細やかに教えている。


採用試験合格はスタート地点

 常に勉強する教師を目指せ

北海道師範塾主催の教師養成講座で話す吉田洋一塾頭

 「皆さん、教師を目指すなら、挨拶は大きな声ではっきり言いましょう。先生の声が小さければ、生徒の心は一つになりません」

 11月9日、札幌市内の藤女子大学で開かれた北海道師範塾主催の第3期教師養成講座で、吉田洋一塾頭は開口一番こう切り出して受講生の姿勢を正した。

 同講座に参加したのは、来年度の公立学校教師採用試験の合格を目指す現役大学生や現在、臨時的採用中の教員ら31名。この日は、講座初日でオリエンテーション後に3講座が開設された。

常に勉強する教師を目指せ

さまざまなエクササイズを使って他者との理解を深める演習

 最初の講座を担当した吉田塾頭は、「教師になるとは」をテーマに教師の心構えを訴えた。

 「営利を目的とした教員試験合格を目指す専門学校は札幌市内にも幾つかありますが、当塾は教師採用試験の合格を最終目的とはしません」と明言。「合格はあくまでもスタート地点です。教師とは何か、教師になって何をしたいのか、それを自らの胸に刻み研鑽(けんさん)を積んでほしい」と同塾が目指す理念を説明した。

 続いて2講座目では、オホーツク管内小清水町立小清水中学校の長野藤夫校長が「道徳教育」をテーマに模範授業を披露。

 改正教育基本法、小中学校の学習指導要領をもとに、「愛国心」「郷土愛」の大切さを説いた。

 具体的には、明治中期から昭和20年までの日本の台湾統治時代の事例を紹介しながら、今なお日本が台湾の人々から好感を得ている点を強調、「日本人の他を思いやる心のすばらしさ」を訴えた。

 3講座目は札幌市立元町北小学校教諭による演習指導。採用試験での面接に際して、自己アピールや他者との信頼関係の構築は極めて重要な項目の一つだ。

 講座では、1人が目をつぶりもう1人が無言で案内をするトラストウオークや参加者一人ひとりが隣の人に幾つかの質問を行うインタビューなどのエクササイズを使い、参加者同士の交流を深めた。

 同塾は平成22年(2010年)9月に現役教師を含めた教育関係者によって設立された団体。

 学力低下や運動能力不足、さらにはいじめや不登校など教育現場では深刻な問題が山積する一方で、教師の政治活動など服務違反が問題になる北海道の教育界。

 そうした中で設立された同塾は、「教師としての自覚と矜持をもって子供たちのために日々自らの襟を正し研鑽する教師のネットワークをつくり、ともに学び成長していく」との目的をうたう。

 その事業の一つとして平成23年から教師養成講座をスタートさせた。その結果、採用試験合格者も増加傾向にあり、第一期は受講生28名のうち12名(43%)、第2期は21名のうち12名(57%)が合格している。一般に教員採用試験は6倍近い狭き門で合格率は17%前後。それに比べると同塾の合格率は極めて高いといえる。

 教師養成講座の講師は大学教授や現役教師がボランティアで担当。それでも11月~翌年7月まで80講座をもち、教師論、指導論といった座学から模擬授業、集団面接など教育現場に必要な能力を伝授する。

 「講師の思いが受講者に伝わって一人でも多く合格してもらい、志の高い教師になってくれることを願っています」と語る吉田塾頭。

 混迷する北海道の教育界にあって同塾の役割は一層高まっている。