秋田大学が学部新設 資源獲得競争の激化受け教育拠点として

地質巡検など体験学習 世界レベルの教員準備へ

 レアアース、レアメタル、原油、シェールガスなどの資源を巡って、世界規模で獲得競争が激化する中、秋田大学(秋田市、吉村昇学長)では「国際資源学部」の新設がこのほど、文部科学省に認められた。専門知識や語学力を備え、内外で資源開発に携わる人材の育成が期待されている。(市原幸彦)


地表探査を行う秋田大の学生たち=秋田大工学資源学部ホームページから

地表探査を行う秋田大の学生たち=秋田大工学資源学部ホームページから

 秋田大には現在、教育文化学部、医学部、工学資源学部の3学部がある。来年度から国際資源学部新設(定員120人)とともに、工学資源学部を理工学部に改組。4学部体制に移行する。国内の大学で資源系学科が再編、縮小される中での新設だ。

 「資源開発において国際的な拠点となる学部をオールジャパン体制でつくり、グローバルに活躍できる人材を養成する」(総務課新学部設置準備室)ことを目指す。

 ベースメタルといわれる銅・鉛・亜鉛の国内生産は、70年代をピークに今やほぼゼロに近く、日本のエネルギー自給率はわずか4%だ。優秀な海外メジャーが資源を押さえ、中国も進出する中で、資源供給を支え、資源への知識と共に国際的、経営的視点を持って世界の第一線で活躍する人材の育成が急務となっている。

 また、各国の大学教育でも鉱山から地球の表層部分(地層)に教育プログラムが拡大。その開発、保全、リサイクルなどに研究対象を移してきている。

 こうした状況に対応するため、国際資源学部は「文理融合」を掲げ、資源学の専門知識だけでなく、国際情勢、資源国の歴史や文化、法律を学ぶ。実践的かつ学生が互いに学び合う『人文社会系・技術系パッケージ型教育』だ。

 「資源学の知識を有しつつ、資源ナショナリズムや国際情勢などの問題をきちんと認識し、国際舞台で即戦力となる人材の養成が急務」(準備室)だからだ。

 秋田大は4年前に全学組織として国際資源教育研究センターを開設。国内では東大や東北大など、海外ではフライベルグ工科大学、東カザフスタン工科大学など16大学と連携してきた。今回、それをさらに深め、資源学の国際拠点となることを目指している。

 学部運営は社会の声を反映できるようにし、カリキュラムの編成や教員の人事などの重要事項については、外部の人材も加えたカウンシルという場で審議する。

 同大の工学資源学部は明治43年に開学した官立秋田鉱山専門学校がルーツ。資源分野において100年の歴史があり、専門技術、国内外の人脈の蓄積を礎とした「資源探査・開発から環境リサイクルまで」を国内で唯一、体系的に一貫して学べる基盤がある。

 また、秋田県には尾去沢など旧鉱山が豊富。現在採掘中の鉱山もあるほか、レアメタルなどのリサイクル施設もあり鉱山廃水の研究も進んでいる。また、最近シェールガスが発見されるなど、教育・研究のフィールドとして地理的なメリットもある。

 こうしたメリットを生かし、カリキュラムの初年次では、実習科目「資源学実習」を学部の全学生が履修。秋田県内および近傍にある資源関連施設や地質実習フィールドで、事業所の見学や地質巡検を行い、体験的に学ぶ。

 また、3年次の重要実習科目として「海外資源フィールドワーク」を実施。学部の全学生が資源国における国内外の資源系企業でのインターンシップや研究機関での調査活動などを行う。

 世界の資源に関する最前線の動向を把握し、資源開発と関係諸国における課題の理解、解決へ向けた実践的能力を身に付ける。加えて、異文化社会における適応力、共存力も身に付ける。

 ディスカッション、ディベート、プレゼンテーション技法等の演習科目を必修化し、学生が能動的に学ぶ仕組みをつくる。コミュニケーション能力を伸ばし、主体的に問題を発見し解答を見いだす力を醸成。英語による専門教育も実施する。

 目標とする人材の「世界的教育拠点」の実現には、高い教育レベルの維持が不可欠だ。「資源学を世界レベルでリードする教員陣を準備し、専門的知識・技術を学ぶ環境を整える」(準備室)という。

 学生が体系的な研究を続けるための大学院の早期開設や、他校にも派遣し得る高い素質を持つ教員養成も検討課題となっている。

 吉村学長は「日本の資源戦略を人材の面から底上げしていく。資源国の優秀な留学生も積極的に受け入れていく。それが将来的には日本の国益に資するという信念で取り組んでいる」としている。