夢と目的をはっきり持つことが大切

五輪とスポーツ教育テーマに講演

 宜野湾ロータリークラブは4月3日、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会CEOとして東京五輪誘致を導いたミズノ株式会社の水野正人会長を招き、沖縄の中高生のアスリートらを対象に講演会とパネルディスカッションを行った。水野会長や教育指導者らは、五輪という大きな舞台に向かって日々努力することやチームワーク、夢を持つことの大切さを伝えた。(那覇支局・豊田 剛)

2020東京大会誘致に貢献した水野正人ミズノ会長

夢と目的をはっきり持つことが大切

パネルディスカッションに参加した(左から)我喜屋優氏、名城政一郎氏、水野正人氏=3日、那覇市の県立武道館

 パネルディスカッションには、興南学園理事長兼興南高校・中学校校長の我喜屋優(がきやまさる)氏、尚学学園副理事長で沖縄尚学中学校長の名城政一郎(なしろまさいちろう)氏、水野会長が登壇。アスリートとしての心構えについて語った。

 興南高野球部監督として2010年、高校野球の春夏連覇を導いた我喜屋氏は、高校卒業後「初めて沖縄を離れて静岡の社会人野球チームに入った時、ハンマー投げの元日本記録保持者で五輪選手の室伏重信氏や野球部員らの練習を目の当たりにした。沖縄でこれまで見てきたものとはまったく違って、基本練習を繰り返していた」と述べた。

 「自分は野球バカだった」と学生時代を振り返った我喜屋氏は、陸上、サッカー、スケートなど他の競技のトレーニングも取り入れることで、バランスの取れた野球選手としての基礎が作られることに気付いたという。

 北海道の野球部監督も経験した我喜屋氏は、「昔は沖縄の子は暑さに強く、北海道の子は寒さに強かった」が、「今はどちらも温室育ちで室内型、冬眠型」と分析。

 「北海道では冬、雪かきをして汗を流した後、グランド整備して練習した。沖縄では、梅雨時期でも長靴を履かせて練習した。自然と闘わないと本当の強さはない」。

 両極端の厳しい環境での監督を経験した我喜屋氏は、「常に外を見て自分に足りないことを埋める努力をすべき。何かを見つけて先々行く気持ちが欲しい」と若者にエールを送った。

 引き続き名城氏は、「学問では理論性や数字が大事だが、その前にまずどんな人なのかが問われる。人柄はスポーツをする上でも大事だ」と自身の米国留学を通じて感じた思いを披露した。

 沖縄尚学高校の柔道部について名城氏は、「練習環境は最悪だが全国優勝した。我慢する力がある人はどんな練習でも我慢ができ、それが人柄の良さにつながる」と語った。また、五輪について「いろんな価値観のある人々が一つのルールを守って競技をする」と評価、若者に向けて「成長を成功と考えるメンタリティを日頃からつければ自己実現につながる」と述べた。

 水野氏はビジネスマンの観点から「常に人の話を聞いて、意見を必ず尊重すれば成果が出る」と述べた。その上で、「人間は夢と目的をはっきり持つことが大切。どのように社会に貢献したいのか考えて人生設計してほしい」とエールを送った。

 講演とパネルディスカッションに先立ち、実行委員長の宮城富夫氏は、開会のあいさつで「オリンピックを通して県内の青少年を心身ともに健全育成すると同時に、野球・ソフトボール・空手の開催要望アピール、空手競技採用時の会場を沖縄に誘致したい」と述べた。

 講演会の最後には県内から東京五輪出場を目指すアスリート4人、ウエイトリフティングの知念光亮(こうすけ)さん(沖縄国際大2年)、車いすレースの上与那原(うえよなばる)寛和さん(株式会社ネクスト)、ボウリングの石嶺可奈子さん(エナジックボウル美浜)、ゴルフの新垣比菜さん(興南高2年)が紹介された。


水野正人氏の講演要旨

東京五輪でレガシー残そう

 世界には、環境(Environment)、流行病(Epidemic)、経済(Economy)という三つのEの脅威がある。こういう時代だからこそ、日本が頑張って世界の模範として世界をリードしていくべきだ。これが日本に課せられた義務だ。

 東京五輪の誘致のカギは、①健全な財務②競技場や選手村などの計画③国民の支持率④評価委員会の印象⑤プレゼンテーション⑥ロビー活動――だった。

 2020年東京五輪がスムーズな大会運営をすること以外に、以後、どのような社会を作るかというのが「レガシー」(遺産)で、10年後の2030年に大会が成功だったかどうかが判断される。

 レガシーの中でも、有形レガシーはスポーツ施設と選手村。これらを大会後、いかに利活用できるかが問われる。無形レガシーは文化や教育、精神面。東京五輪はロンドン五輪のようにボランティア精神で世界中のお客様をもてなしたい。また、五輪をきっかけに新しいビジネスがどんどん生まれることにも期待したい。