生徒自身で決めたSNSマナー


群馬県藤岡市立小野中学校の試み

 いじめや仲間外れ、さらには誹謗(ひぼう)中傷、犯罪被害に遭うなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用する中学生の間でトラブルが増えている中、学校やPTAが使用ルールを決めて生徒に示すのではなく、生徒自身がルールを決める試みが今月17日、群馬県藤岡市立小野中学校(関根真理校長)で行われた。(編集委員・岩崎 哲)

「午後10時に止める」で結論

「きずなタイム」で話し合う

生徒自身で決めたSNSマナー

教師が見守る中「SNSとの付き合い方」を話し合う中学生たち=17日、藤岡市立小野中学校

 「それでは(午後)9時には意識し出して、10時には止めるようにする、が小野中マナーとなります」

 同校では1、2、3年生が含まれる7~8人の縦割り小グループで話し合を行って課題を考える「きずなタイム」という学習が行われている。今回のテーマが「SNSを利用する時の小野中マナーを考えよう」だ。

 体育館に集まった全校生徒を前に、生徒会長の鈴木詩士君(3年)が「SNSとの付き合い方を一緒に考えていきましょう」と呼び掛け、①思いやりのある使い方②健康や生活への弊害をどうなくすか―などをテーマに話し合った。

 小グループでは3年生が主導して、メンバーが出す意見をホワイトボードに書き出し、グループとしての結論をまとめて行った。校長はじめ先生は見守るだけで、意見を挟むことはしない。

 検討時間が終わると、いくつかのグループが代表で発表を行い、「(使用)時間を決める」「個人情報を載せない」「相手の状況を思いやる」「ベッドには持ち込まない」などの意見が出された。特に使用時間については「9時まで」「10時まで」などの考えが示され、話し合いの結果、前記のような「小野中マナー」が決められた。

 同校が事前に行ったアンケート調査によれば、約40%が携帯電話(携帯)・スマートフォン(スマホ)を所持していた。そのうち60%がスマホで、ほとんどが無料通話・メールアプリのLINEを利用している。所持しているのも圧倒的に3年生が多いという結果だった。

 ちなみに、内閣府が昨年11から12月に行った全国調査によると、中学生の携帯・スマホ所持率は52%。そのうち約5割はスマホだった。

 同中学校で生徒が自身でスマホルールを決めることになったのは1学期に行われた特別授業がきっかけだった。市民団体「ぐんま子どもセーフネット活動委員会」副委員長、の吉田茂幸さんが携帯やスマホの使い方、マナーや危険性などを講義したのち、「自分たちでルールを決めたらどうか」と呼びかけたのを受け、今回の試みとなった。

 吉田さんは、「SNSは判断力、自制力が備わらないとトラブルが起きやすい」とし、「送信内容を相手がどう思うか、自分が受けたらどうかを考えて、受信しても5秒で返さず、1分考えてから返信するようにしたらいい」と生徒たちにアドバイスした。

 生徒会副会長の山本翔真君(3年)は、「自分たちで決めたことだから、(夜遅くのLINEやりとりなどを)『やめよう』と言える。だんだんとする人が減って行くと思う」と語った。携帯・スマホを持っていない同書記の池田萌さん(3年)は、「先生に決められるよりも、自分たちで決めれば、みな守りやすいと思う」と感想を述べていた。

 関根校長は「とりあえずの一歩ですが、大きな一歩を踏み出せた」と評価した。

 吉田さんは「群馬県内でルールを決めた高校が2校あるが、保護者やPTAによるもので、中学生が自分でルールを決めたのは初めてだろう」とし、「既に全国では同じような動きが始まっており、今後、生徒によるルール作りが増えていく」との見通しを示した。