コシノジュンコさんがSOLA沖縄学園の客員教授に

 学校法人SOLA沖縄学園(宜野湾市)は今年度、世界的デザイナーのコシノジュンコさんを客員教授に迎えた。沖縄観光大使を務めるほか、G8沖縄サミット(2000年)のかりゆしウェアのデザインや琉球海炎祭(宜野湾市)の花火をデザインするなど、沖縄とのつながりの強いコシノジュンコさんは、沖縄独特の文化を世界に向けて発信していくことに意欲を示している。(那覇支局・豊田 剛)

「独特の美学を作り出したい」

コシノジュンコさんがSOLA沖縄学園の客員教授に

記者会見に出席した(右から順に)佐喜真淳宜野湾市長、コシノジュンコさん、仲田雅彦理事長=4月10日、那覇市内のホテル

 同学園は「日本スポーツ健康福祉専門学校沖縄」と「専門学校ホリスティックビューティー・ブライダルカレッジ」からなる専門学校。

 前身は「国際リゾート・スポーツ科学専門学校」で1994年開校。観光とスポーツの教育を専門とし、全国で初となるマリンスポーツ科、さらには硬式野球学科を設置した。2002年春からは現在の名称に変更、リゾートとスポーツを軸にしつつ、IT教育にも乗り出した。

 ホリスティックビューティー・ブライダルカレッジは04年に新たに開校。来年度は、美容専門学校を開校する予定だ。SOLAはSpecial(専門的)、Original(独創的)、Local(地域的)、Active(積極的)の頭文字からなる。

 宜野湾市は、プロ野球の横浜DeNAベイスターズが春季キャンプを行っているが、「横浜ベイスターズ」時代に監督を務め、現在は解説者としても活躍する大矢明彦さんも同学園の客員教授を務めている。

 今年度、新たに客員教授となったコシノジュンコさんは4月10日、同学園入学式で「輝く仕事をするために―みえる仕事みえない仕事」と題して講演。そのあと、自らが花火をデザインした琉球海炎祭と同学園による合同記者会見が行われた。

 同学園の仲田雅彦理事長が客員教授に招聘したのは、コシノジュンコさんの著書『人生、これからや!』(PHP研究所)を読んだことがきっかけだった。「本には学生に言いたい、伝えたいことがぎっしり書かれていた。内容に共感し、無理を承知で客員教授をお願いしたところ、快く引き受けていただいた」と仲田理事長。

 客員教授に就任する意義について、コシノジュンコさんは次のように述べた。

 「日本最南端のリゾート地で、世界から注目される魅力を持っている。日本本土の単なる延長ではなく、エイサーなどトータルで何かしら本土とは違った魅力がある。これを世界に向けて伸ばしていくことができる。こうした伝統文化を生かし、沖縄でなければできない独特の美学を作り出していきたい」

 「若い時の経験がものすごく大事」というコシノジュンコさんは、「出会いはクリエーション(創造)の場でもある。どんな時に、どんな物に、誰に出会うのか。学生対象の講義では出会いのチャンスを持ってくることができればいい」と意気込みを語った。同学園では、コシノジュンコさんの講義は、全学生対象にする予定だ。


コシノジュンコさんの客員教授就任メッセージ

原点変えないため変えていく

 アジアへの身近さとアメリカ統治時代からのチャンプルー(混合)文化を持ち合わせるエキゾチックで神秘的なイメージが沖縄にはある。これらのイメージと文化を大切に、アジアとのつながりを築いていくには良い環境にある。文化も独自性があり、担い手も豊富に存在するので、自信をもって取り組み、発信していくことが重要だ。

 美やファッションにはセンスが重要だと言われる。センスとは、世の中の変化に対して柔軟に状況を判断する力のこと。時代とともに文化は常に変わっていく。しかし、変わるだけでは元の姿がなくなってしまう。原点のイメージを変えないために、変えていくことが重要。

 沖縄文化の一つにエイサーがある。エイサーを通して世界に沖縄の文化を伝える場合、見え方や伝え方を変えていく取り組みも必要だ。エイサーの衣装に新たなファッションの要素を組み入れた課題に取り組むことで、新たな魅力を生み出すことができるかもしれない。自分たちの文化や特徴をどう世界に発信するか。東京を見ることも重要だが、もっとアジアに目を向け自信を持って取り組める環境が沖縄にはある。

 おしゃれやファッションは、なぜ必要なのか。人は誰にも会うことがなければ、おしゃれは必要ではない。会う人がいるからおしゃれをしようと思う。自分ではなく人のため、見てくれる人が喜ぶ姿を見るために。

 仕事も同様で、人に喜んでもらうことが相手への思いやりであり、おもてなしの心とも言える。見えない部分でいかに準備するかが大切。おもてなしとは「表が無い」ことだと思う。表が1%だとすれば99%は裏。1%が一瞬だけ表に出る。例えば、すし職人は朝早くから仕入れ、店の手入れ、仕込み、さばきまで行う。すしを握る前の準備が99%だ。そして、緻密な準備のもとに握った小さな一貫でおいしさを伝える。これが1%の表なのだ。