財団法人日本宇宙少年団「ノシロ分団」設立へ

JAXAの施設がある秋田・能代市

 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設があり、宇宙のまちづくりを進める秋田県能代市で宇宙や科学、自然に対する子供の探求心を育てる財団法人日本宇宙少年団(本部・東京都)の「ノシロ分団」が今月設立。宇宙教育を通して、ものづくりへの興味を深める機会を提供する。(市原幸彦)

恵まれた教育環境生かす 「宇宙のまち」から飛行士出るか

宇宙少年団「ノシロ分団」設立へ

 日本宇宙少年団は現在、全国に140、東北に14あり、約3000人の団員が活動。秋田県内では秋田分団、あきた矢島分団に続いて3番目の設立となる。今月27日に結団式を行う。

 先月3日に能代市子ども館で開かれた入団説明会には、市内外の子供から大人まで55人が参加。予想を大きく超える参加者数について、鈴木大雄(だいゆう)団長(43、市職員)は「小惑星探査機はやぶさの帰還をきっかけに関心の高まりがあったようです」と分析する。

 現在の入団者数は35人。子供26人、保護者など大人9人だ。「家族ぐるみで入団した人たちもいます」と市子ども館職員の千羽正人さん。

 設立のきっかけは、平成23年初め、鈴木団長が市総合体育館での「はやぶさ」のカプセルの展示に携わった際、少年団の存在を知ってから。市が「宇宙のまち」を標榜(ひょうぼう)していたこともあり、分団の活動を通じて宇宙に興味を持つ人の裾野を広げようと思い立った。

 同年3月に東日本大震災が発生し、それどころではなくなった。しかし、同じくJAXAの施設がある岩手県大船渡市に震災支援で行ったり、千羽さんと話し合ったりしながら立ち上げの具体化を考え、ボランティアに呼び掛けるなどして、今年1月末に準備会を発足する運びとなった。

宇宙少年団「ノシロ分団」設立へ

入団説明会では、鈴木大雄団長(右端)、千羽正人さん(その隣)らスタッフが紹介された=3月3日、能代市子ども館(市地域情報課広報広聴係提供)

 ノシロ分団は主に市こども館で月1回程度活動。小型観測ロケットの研究を進めている秋田大学の「ものづくり創造工学センター」の見学や、同市で毎年夏に開かれている「能代宇宙イベント」への参加のほか、JAXAの関連施設のある県外各地を訪ねる。科学実験教室や白神山地での自然観察会も計画している。

 秋田大学などによる「能代宇宙イベント」は、能代市で毎年8月中旬に行われる日本最大規模の学生・社会人によるロケット打上および自律ロボット制御のアマチュア大会。児童生徒向けの学習体験も行う。今夏の開催で10回の節目を迎える。

 鈴木団長は「大人も子供も一緒に楽しみながら学びを深められる場にしたい。大人には学習のサポート役も期待したい」と抱負を語る。

 日本のロケット開発の歴史で、その黎明(れいめい)期から秋田県が深く関わってきた。わが国の宇宙開発に道を開いたペンシルロケットの打ち上げ実験は昭和30年、由利本荘市の道川海岸で行われた。能代市浅内には昭和37年、現在のJAXAの能代ロケット実験場が開設され、エンジン燃焼試験が重ねられてきた。

 それが縁となり、市子ども館ではJAXAから提供されたロケットの尾翼や、人工衛星の模型などを見ることができ、宇宙関連の展示が豊富だ。ロケットエンジンの燃焼実験棟、真空状態を作り出す設備もある。モデルロケットを打ち上げる体験授業は市内の小学6年生を対象に実施している。

 秋田大と県、能代市は昨年末に協定を締結。宇宙分野での技術振興や人材育成などを盛り込んだ。ノシロ分団では将来的にはそれとのつながりも視野に入れている。

 分団活動には市子ども館のほか科学実験ボランティアグループ「サイエンスポケット」も協力。同グループは学校の理科の現役教員やOBが中心だ。子供たちへの教育的な指導が期待されている。

 鈴木団長は「テレビゲームやスマホ、テレビなど、ITが進化し、生活は便利になりました。その半面、自然とのふれあいや体験活動の機会が減っています。ノシロ分団では、宇宙教育を通して、子供たちにホンモノを見せたり、物作りを体験させたり、自然に触れあう機会を作ったりしたい。能代と宇宙開発のつながりもぜひ覚えてもらって、ふるさとを愛する心と科学とか宇宙に対する興味や関心を育ててほしい。宇宙飛行士が能代から出てくるようになれば嬉(うれ)しい」と、夢をふくらませている。